2015.12.21
SPECIAL TALK Vol.15ITバブルにより時代の寵児に渦中にいた心境とは
金丸:その後、1年もたたないうちにインテリジェンスを退職され、1998年には株式会社サイバーエージェントを設立されます。当時はおいくつでしたか?
藤田:創業時は24歳、上場したのが26歳でした。
金丸:インターネット広告会社で初めての上場、しかも26歳という若さ。我々も非常に驚きました。ただ、創業時のお話はいろいろなところで語られていますから、今日はあまり深掘りしません(笑)。当時は「ヒルズ族」などといわれて、まさに時代の寵児でしたね。
藤田:そうですね。六本木ヒルズにオフィスは無いのにそう呼ばれていました(笑)。いま振り返って思うのは、2000年前後のITバブルといわれた時期に、ビットバレーと呼ばれた渋谷にいて、その盛り上がりの最中にいられたというのは、すごく大事なことでした。当時、私の周りにはlivedoorやGMOなど多くのIT企業が集まっていましたね。あの輪から外れていたら注目を浴びることもなかったし、その後の成長も考えられなかったと思います。
若者はリスクをもっと積極的にとるべき
金丸:藤田社長のお話を伺っていると、自分の夢に近づくためにアルバイト先も就職先も選ばれているように思います。いまの就職戦線を見て、どのようなことを感じてらっしゃいますか?
藤田:いまの学生は安定志向が強いと思います。ドラマの「半沢直樹」が放送されて銀行の人気が下がるかと思いましたが、逆に上がったと聞きました。日本人はどこまでいっても、安定志向から抜け出せないようです。
金丸:目に付くものに飛びついてしまう傾向がありますよね。毎年、日経の就職ランキングが発表されますが、あれもどうかと。学生の立場からしたら、あの中の企業から選ばないといけないと考えてしまいます。
藤田:ランキング上位の企業に就職することが一種のステータスになってしまいますよね。そうじゃなく、自分で考え抜いて判断してほしい。
金丸:では、いまの若者に足りないものは何だとお考えですか?
藤田:やはりリスクを取ることでしょうか。若い頃は失うものが何もないはずなのに、失敗して馬鹿にされたり、叩かれるのが怖くてリスクを取れない人が多い。でも、失敗をしながらメンタルを鍛え、経験を積み、恥をかくことを恐れずに挑戦した人はその分成長も早いと思います。いま活躍されている経営者の多くは、そういった時期があったからこそ、大きなリターンを得ています。
金丸:サイバーエージェントには、若手でも活躍できる風土がありますよね。
藤田:新卒1年目から子会社の社長を任せたり、20代の社員を取締役に抜擢したりと、ポジションを与えて経験させることは当社の代表的な文化の一つ。新たな事業分野の場合、特化した子会社を設立しやる気のある若手を抜擢することで一生懸命に頑張り、事業の立ち上がりが早くなります。ただ、業界慣習が確立された分野では、若い世代だと競争が激化してきたときに、戦う術がなくなってしまうことが少なくないです。
金丸:新しい市場で生き抜く力はあっても、いったん成熟してしまった市場をひっくり返すようなアイデアや実行力は、なかなか育たないということですね。いまの日本では、業界を根こそぎ変えてしまうようなパワーが求められるのではないでしょうか。ここ数年の人材の流れを、どのように見ていらっしゃいますか?
藤田:私が社会に出たときは、成果主義が強い時代でした。自分に市場価値をつけたあと転職市場に出ていくという流れがあり、当時は人材の流動がより高まっていくように感じていました。でも、一過性のものに過ぎませんでしたね。やはり、日本社会に深く根付いている同族、家族経営のようなものがなくなることはない。会社に対するロイヤリティが高く、優秀な人はそう簡単には辞めませんし、結局、人材の流動はそこまで起きていません。
金丸:そうですね。なかなか欧米のように会社をまたいでステップアップを、という風潮は根付きません。ちなみに、御社の離職率はどれぐらいですか?
藤田:おおよそ7〜8%です。非常に健全な数字だと捉えています。
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