SPECIAL TALK Vol.14

~空気を読みすぎない、その姿勢が突き抜けたサービスを創造する~

金丸恭文氏 フューチャーアーキテクト代表取締役会長CEO

大阪府生まれ、鹿児島県育ち。神戸大学工学部卒業。1989年起業、代表取締役就任。産業競争力会議議員、規制改革会議委員、内閣官房IT本部 本部員、経済同友会副代表幹事、NIRA代表理事を務める。

日本に必要なのは空気をガラリと変えるイノベーティブな人材

金丸:最後に、森川社長にこれからの日本について伺いたいと思います。いまの日本経済は、これまで産業の中心だった家電業界が窮地に追い込まれ、自動車産業だけがひとり気を吐いている状況です。森川社長は、こういった産業の浮き沈みについてどのように思われますか?

森川:そうですね、そもそも産業というのは、その国がその産業を生み出すのに適しているか、もしくは、非常に大きな難題があって追い込まれているかのどちらかだと思っています。韓国のブロードバンドにしても、やはり追い込まれていたからこそ、あそこまで成長を遂げました。そういった意味で考えると、いまの日本で大きく変わる可能性があるのは、再生医療の分野か新しいエネルギーの分野、もしくは農業分野。この3つだと思います。ですが、どの分野も規制があり既得権益をもつ団体がいるので、革命を起こす気概で戦わないと、そう簡単に覆るものではありません。

金丸:戦うといえば、アメリカのAiRBnBのブライアン・チェスキーとか、UBERのトラビス・カラニックとかが思い浮かびますよね。彼らは「規制なんか関係ない」「破壊し続けるんだ」という気概で戦っています。

森川:そうですね。アメリカではまさに革命家のような扱いをされていますよね。

金丸:彼らはビジネス界の革命児。自らそう思っているわけですよ。そこに世の中の支持とお金が集まるのは、すごいことだと思います。日本だと異端児扱いされてしまいそうです。

森川:音楽にたとえるなら、ロックやダンスミュージックが生まれた時のような、反骨精神に満ちたマインドを感じます。そこに若い人が乗っかっていくような流れですよね。

金丸:彼らは体温が違うような気がします。一見すると“アウトロー”という雰囲気があるのですが、本人たちはそんなことどうでもいいと思っている。

森川:ビジネスに全力を注ぐ情熱とエネルギーがありますよね。

金丸:社会全体に配慮するような、すべてのステークホルダーに気を使うような優等生では、イノベーションを起こすことはできないでしょう。

森川:日本人は良くも悪くも、空気を読みすぎるところがあります。たとえば、意見を言っても周りの目を気にして、結局賛成か反対かわからない人が多い。それだとやっぱり、突き抜けたものは生まれません。

金丸:日本社会はいま、コンプライアンスの順守を声高に叫んでいます。これは、規制をも順守していくこととイコールな面もありますから、やはりUBERのようなサービスが生まれる隙はなくなっていきますよね。イノベーティブからどんどん遠ざかっているように感じます。

森川:ある方がおっしゃっていたのですが、日本は法学部の人がエリートになっている。それは法学部の本質とは違っているのではないかと。法律家は間違っていることも正しく見えるように説明することが得意なので、間違ったものでも、正しく見える社会になってしまうのではないか、と。一方で、理系の方というのは、やはり間違いを許せない方が多いように思います。そういう方が世の中を変えていくのではないでしょうか。

金丸:理系の学生には目を覚ましてもらいたいですね。

森川:同感です。

金丸:大きい会社に入れば安全というのは、この時代、もう迷信のようなものです。技術革新は日進月歩で起き続けています。

森川:日本は理系のエリートが大企業の研究所に送り込まれ、そこで塩漬けにされて、外に出ることができないという流れがある気がします。もちろん結果を残す方もいますが、そうでない方が圧倒的に多い。そこに起業という選択肢をもっていただきたいですね。

金丸:それは面白い。研究所は最も平和で安全な場所だから、理系のエリートはそこを目指せ、という空気が漂っていますからね。これでは、世界の変化から遠ざかって、田舎に一戸建ての住まいを建てるのと一緒です。

森川:だからこそ、日本の研究所がすべて解散したら、世の中ががらりと変わるのではないでしょうか。理系の方たちにこそ起業を志してほしいと思います。

金丸:今日お話を伺い、森川社長は常に大局を見て、そこに挑んでいく性分であると確信いたしました。ウィットに富んだお話で非常に楽しい時間でした。またぜひご一緒させてください。ありがとうございました。

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