SPECIAL TALK Vol.7

~目指すべきは、価値あるものを認める社会。信頼のある“日本のものづくり”が世界で戦うカギとなる~

大量生産型から職人たちの個性を重視する時代へ

金丸:御社は海外に18店舗を出店されていますが、今後のグローバル展開についてどのようにお考えですか?

大西:当社がさらに成長する上で、グローバル戦略は非常に重要です。いまいくつかのプロジェクトを進めており、ひとつは今年秋の開業に向けて、マレーシアの首都クアラルンプールにある伊勢丹LOT10店舗を、日本のプロダクトだけを扱う百貨店とするように準備を進めています。日本の魅力を全面に出し、“クールジャパン”の発信基地になることを目指しているのですが、実は2011年から国内の店舗で、日本の魅力を新しい価値として再認識するための「ジャパン・センスィズ(JAPAN SENSES)」という取り組みを行ってきました。デザイン性や機能性など魅力
にあふれた商品を海外に発信するには、まずコンテンツが必要です。そのコンテンツを日本各地から発掘し、紹介するという活動でして、ここで培ってきたノウハウをマレーシアの店舗で活かしたいと思っています。当社にとっては新たな挑戦ですが、“これぞジャパン”というプロダクトを発信する、新しい店舗モデルを作り上げたいですね。

金丸:海外で本物のクールジャパンが体感できる、楽しみな百貨店になりそうですね。

大西:また、日本のものを輸出するだけでなく、逆にこれまで日本にあまり入ってこなかった、南米や中東のライフスタイルを日本に紹介することも行っていきたいと考えています。まだ日本では知られていない文化が世界には多数ありますからね。

金丸:やはり海外視察や出張は多いのですか?

大西:そうですね。ヨーロッパのラグジュアリーブランドのトップの方々にお会いしたり、年に2回開かれるコレクションにも、毎回とはいきませんが、参加しています。そのほか東南アジアと中国にお店がありますので、それぞれ年に数回は行っております。

金丸:大西社長が一番関心をお持ちなのは、やはりファッションでしょうか?

大西:そうですね。私自身、紳士服の売り場に長く携わってきましたし、新宿のお店に限っていえば、利益の大半がファッション関係ですので。

金丸:ファッションの発信地には、イタリア、パリ、ロンドン、さらにアメリカもありますが、業界を最も牽引しているのはどの地域なのでしょうか?

大西:やはりヨーロッパですね。特にイタリアでしょう。最近ではアメリカ西海岸も目立ってきています。これまで目にしなかったアイテムが次々に入ってきており、ファッションの潮流も少しずつ変わりつつあります。

金丸:イタリアの強さとは、どういったところにあるのでしょうか?

大西:昔ながらの職人さんがいて、いわゆる家内工業が残っている点です。イタリアのモノづくりには素晴らしいものがあります。そこにデザインというビジネスが加わっているのが、イタリアの強みです。常に新しい感性に出合えるという愉しみがあると思います。

金丸:日本と比較すると、イタリアはデザイナーありきというイメージがあります。たとえば日本の場合、服を作るとなるとどうしても工業化に向かいますよね。大量生産型を目指すので、必然的に職人さんが手塩にかけたスーツは市場に出てこなくなります。そう考えると、必ずしも工業化がいいとは限らない。

大西:イタリアにはいまでも家族単位のビジネスが残っています。普通、少し人気が出てきたら事業拡大に向かうと思うのですが、それがほとんどない。家内工業のままで工業化されないことが、イタリアの特徴と言えます。

金丸:イタリアのように、素晴らしい職人たちが個性的なモノづくりを長く続けられる社会に、日本ももう一度戻るべきだと思います。大量生産で作られた製品の需要は、確実に減ってきていると感じています。いまの消費者のニーズは多種多様。しかも個性重視です。

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