口説ける男 Vol.1

口説ける男:35歳独身のベンチャー社長。その口説き方はどこで習ったの?

女のテンションを考えずに、暴走モードに突入


気づけば洋介が腕を私のイスの背もたれに回している。距離が近い。初デートで、このように相手のテンションも考えずに無理矢理距離を縮めてくるタイプの男たちは、一体どういう思考回路をしているのだろう?と本気で思う。

それなりに仕事がデキるだろうに、女の心理にこれだけ疎いのは何故なのか。身体目当てにしても、もう少しマシな口説き方は出来ないものか。

洋介は突然、身体の相性の大切さを延々と語り始めた。まさに暴走モードに突入だ。デート3回目までには1度は寝るべきだとか、食事の場で理解不能の自論を繰り広げている。私が相槌もほとんど打たなくても、洋介は気にする様子もないようでひとりでいやらしい話題を続けた。

食事も終盤になり、姉の言っていた土鍋ごはんをカウンター越しに披露されたときは、「お腹がいっぱいなので、全部おにぎりにして下さい。」と、ついハッキリ言ってしまった。洋介は流石に少し面食らっていたが、体調が悪いと適当にフォローし店を後にする。

「体調が悪いなら、俺の家で休んでいきなよ」店を出るとすぐに洋介は言った。料理単価約2万円で持ち帰れると思われた自分が可哀想になってくる。大丈夫です、帰ります、と何度か言ったが、洋介は引き下がらず押し問答が続く。

「俺、1回目のデートでキスも出来なかったら、もう誘わないよ?」と言い、腕を強めに掴まれた。これは冗談ではなく真剣なようだ。

大丈夫ですと腕を思いっきり振り払い、駆け足で10メートルほど離れるようとする。すると突然「ねぇ、うちにWiiあるよ!」と、後方で再度叫ぶ洋介の声が聞こえてきた。何というダメ押し。小学生じゃあるまいし、Wiiで釣れると本気で思っているのだろうか。

まさかのゲームで釣ろうとする洋介に少し笑えたが、タクシーに乗り込むとだんだん悲しくなってきた。最近は、3分の1の確率でこういった情けないデートに当たる。元カレの高志と別れてから、東京恋愛市場の厳しさを知った。

単に力任せに口説けばいいというのは全くの別物


3時間もしないうちに、美鈴がおにぎりになった土鍋ごはんを約束通り持って帰ってきた。本当に最悪だった、と繰り返しデート相手の男を罵り、おにぎりを頬張りながらひどく怒っている。よくあることなので、驚きはしない。若さゆえに色々な男を惹きつけてしまうのは、半ば仕方のないことだ。

今日のデート話を聞いて振り返る限り、お店のチョイスはいいと思う。和食であればテーブルマナーもそこまで気にせず味わうことができる。しかしうんちくを語るのは、一緒にいる女性だけではなくお店の人にもいいように思われない。そこは口説くにあたって、マイナスポイントとなるひとつだ。

また自分がお金を出しているからといって、誰々に似ているというどうでもいい話ばかりなのも、いかがなものだろうか。話というのはふたりで楽しむものである。そんな自分のそっくりさん情報はSNSで呟いていてほしい。

なかでも一番最悪だと感じたのは、ごはんを頂く場で下ネタをペラペラと話すこと。ガヤガヤした場でも嫌だが、きちんとしたお店ではそういった下品な話題も他の人に聞こえ、不快感を与えてしまう。それに体調が悪いと言っているのに、1回目のデートで元を取ろうとする洋介の行動には、“ドン引き”という表現以外ありえないと思った。

美鈴の言う通り、豪華な食事を奢れば簡単に一線を越えられると思っている男は意外に多い。しかし、押せ押せで口説かれて、実際に初デートで身体を許す女がいるのかは疑問である。

こういった男たちは、私が独身の頃にもよく遭遇した。草食系男子などという人種が流行る中で、アグレッシブに口説く男も根強く存在するのだ。変に猫を被り、後から危ない本性を出す男よりはマシなのではないかと思うが、単に力任せに口説くだけの男と、口説ける男は全くの別物。

こういう人に出会ってしまったのは不憫だが、女ざかりの妹には色々な男性がこれからも寄ってくるだろう。美鈴の恋愛珍道中は、まだまだ続きそうだと感じた。



本日の教訓:一度高級な食事を奢っただけで口説けると思うな

※本記事に掲載されている価格は、原則として消費税抜きの表示であり、記事配信時点でのものです。

この記事へのコメント

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No Name
こんな男、二度と会いたくないです(笑) 誘ってくれないのなら、笑顔で「ありがとう」と言いたいです。
2020/08/27 18:211

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