第6話:社内恋愛の暗黙のルール。二人だけの秘密のはずが・・・
「あ・・・今夜は、ありがとうございました。そうだ、タクシーのお金・・・」
布袋のけしかけも無残に散り、月並みのお礼の言葉しか絞り出せないことに、自分自信が一番失望している。アキコは、ゴソゴソとバッグの中に手を突っ込み、財布を探した。すると、その手を制するように、玉置は自分の手を重ねた。
初めて触れた玉置の手は、ごつごつと骨ばっており、驚くほど熱い。立ち上がったアキコの目を、タクシーのシートからまっすぐにとらえる玉置の挑発的な上目遣い。
「島田さん。大丈夫だから。その代わりに・・・」
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第7話:34歳独身女。「清濁併せ呑む覚悟がなければ、一生独身だよ」
その夜、アキコは家に帰ってくるなり、フェイスブックで「玉置」を検索してみた。
いいね!を押さないように細心の注意を払って、コメント欄をクリックする。どこかに、藤咲愛の片鱗があるのではないかと目をこらしながら、コメント欄に並ぶ女たちのアイコンをひとつずつクリックして、女の勤務先、年齢、結婚の有無を確認する。同じ会社の子から、航空会社勤務、ヨガインストラクター、テレビ局勤務、料理教室主宰、極め付けにレースクイーン・・・・
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第8話:34歳独身女、ドッキドキのLOVEメール&ドライブデート・・・!
桜が散り葉が茂り色づき落葉した後も、光を纏うことで、「綺麗だね」と言ってくれる人がいるのだ。今が盛りを過ぎたアキコたち34歳も、その知恵にあやかり、人工的な光を纏えば、発光するように輝く20代に勝てるはずだ。
計算するのも小賢しい。まだ、恋人にもなってないのに、愛や、他の女たちの陰に怯えるなんて取らぬ狸の皮算用もいいところだ。大人の女性らしく潔くシンプルに行くのだ!アキコは、携帯を取り出すと玉置に返信した。
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第9話:叶うものなら、アウディの彼氏!
昔、なお美と、貴理子と、車と男の関係について盛り上がったことがある。自分の立場と価値に両目をつぶって棚上げして、好き放題こき下ろす恋愛談義の何と愉しく下品なこと。
か、自信のなさを補完する存在のどちらかに当てはまるらしい。ブランド志向が過ぎても浅はかだし、燃費重視でも色気がない。様々な観点から導き出した、アキコたちの理想の車は、適度に品があり落ち着いた高貴さがありながらも野性味を帯びたアウディ。
翻って今。玉置のアウディの助手席に乗り革張りのシートにもたれかかっている自分の状況が夢のようだ。
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第10話:34歳独身女。「好き」と言われたら「彼女」認定?
男性との色恋沙汰は、数年ぶりだ。恋愛体質ではないアキコは、事故のように自ら恋にも落ちないし、超・安全運転のため、事故に合わされることもない。恋愛は、オリンピックのように4年に一度あるかないかのビッグイベントなのだ。30歳以降出会いの機会もめっきり減り、男性とのデートの記憶すら霞がかかる。
ふっと笑うと玉置は、自然に言った。
「そういうところも含めて・・・・俺、島田さんのこと好きだよ。」
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最終話:34歳独身女「キス」の先にあるもの。
車内には、電話の着信音が鳴り響く。
玉置は、何を考えているのか無言のまま、電話が切れるのを待っているのだろうか。永遠のように鳴り響く着信音が切れると、一瞬の静寂ののち、音楽に切り替わった。
先ほど体中で共感して心が震えた広末涼子の名曲は、今やアキコをあざ笑うかのように、”予定変更スピード写真に寄り道”している。スピーカーから流れてくる陽気なポップとのコントラストが激しく、自分がピエロになったかのような錯覚に陥る。
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