汐留タラレバ娘 Vol.7

汐留タラレバ娘:34歳独身女。「清濁併せ呑む覚悟がなければ、一生独身だよ」

前回までのあらすじ

独身34歳3人組、アキコ、貴理子、なお美。化粧品会社で、経理課長代理として働く島田アキコは、仕事もそこそこ順風満帆だが彼氏はいない。そして3人揃って左手薬指の予定もない。「最後の独身男」として女性たちから絶大な人気の玉置孝太郎からデートに誘われる。玉置のエスコートに完全舞い上がり恋に落ちるアキコ。しかし、翌日、浮かれて会社に行くと、後輩の藤咲愛が、玉置とのデートを知っていることをほのめかす。玉置と、愛の関係を疑う、アキコだが・・・

前回:社内恋愛の暗黙のルール。二人だけの秘密のはずが・・・

その夜、アキコは家に帰ってくるなり、フェイスブックで「玉置」を検索してみた。

池尻大橋の1K、28平米、12万円のアキコの部屋は、住み始めて既に8年目になる。「次こそ結婚して引っ越すんだ!」と毎回鼻息荒く期待に胸を膨らませながら、想いは叶わず、先日4回目の更新を済ませたばかりだ。

ビオレのふくだけメイク落としで、顔を拭きながら、息を潜めてパソコンに向かい合う。玉置がアップしたゴルフの写真。それに紐づくコメント32件・・・

いいね!を押さないように細心の注意を払って、コメント欄をクリックする。どこかに、藤咲愛の片鱗があるのではないかと目をこらしながら、コメント欄に並ぶ女たちのアイコンをひとつずつクリックして、女の勤務先、年齢、結婚の有無を確認する。同じ会社の子から、航空会社勤務、ヨガインストラクター、テレビ局勤務、料理教室主宰、極め付けにレースクイーン・・・・


改めて、玉置の周囲にいる女たちから滲む華やかな世界に打ちのめされる。ネットストーキングという言葉があるが、家に帰って、パソコンの前に張り付いて、延々と玉置の身辺を漁っている地味な自分が情けない。

アキコは立ち上がって、冷蔵庫の中にある飲みかけのワインの栓を抜く。マウント・バレットの、メルロー2011。今注目されているワインブランドの一つ、傑作メルローだ。1脚7,000円もするリーデルのグラスに、メルローをケチらずなみなみと注げる女が、ネットストーキングなどするはずないだろう!

打ち消すように虚勢を張ってみたものの、客観的に見てみれば、暗い部屋でパソコンの青白い明かりに照らされながら好きな女の盗撮映像を見てニヤニヤしている変質者と自分がさほど変わらない気がしてどうしようもなく落ち込む。


ーでも、玉置さんのこと、知りたくて知りたくて止められない・・・ー

カラオケと、一回ごはんを食べただけなのに、こんなことをしている自分は、何て気持ち悪くて、情けなくて、根暗で、ダサくて、品のない女なのだろう。



そのとき、電話が鳴った。

携帯の画面を見ると、なお美からの着信を告げている。ランチの時、玉置と、藤崎愛のことを話したところ、営業部での玉置の噂をさりげなく探ってくれると言っていたのだ。

—アキコ。ちょっと今から出てこれない?—

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