汐留タラレバ娘 Vol.11

汐留タラレバ娘:34歳独身女「キス」の先にあるもの。

前回までのあらすじ

独身34歳3人組、アキコ、貴理子、なお美。化粧品会社で、経理課長代理として働く島田アキコは、仕事もそこそこ順風満帆だが彼氏はいない。「最後の独身男」として女性たちから絶大な人気の玉置孝太郎からデートに誘われたことをきっかけに好意が芽生えるが、後輩の藤咲愛を始め数多の女性との浮いた噂に落ち込むアキコ。そんな中、二度目のデートで鎌倉のドライブデートで玉置から好きだと告げられるものの、藤咲愛からの電話に冷水を浴びさせられた気持ちになる・・・

前回:「好き」と言われたら「彼女」認定?

車内には、電話の着信音が鳴り響く。

玉置は、何を考えているのか無言のまま、電話が切れるのを待っているのだろうか。永遠のように鳴り響く着信音が切れると、一瞬の静寂ののち、音楽に切り替わった。

先ほど体中で共感して心が震えた広末涼子の名曲は、今やアキコをあざ笑うかのように、”予定変更スピード写真に寄り道”している。スピーカーから流れてくる陽気なポップとのコントラストが激しく、自分がピエロになったかのような錯覚に陥る。

藤咲愛との関係を問いただせたらどんなに楽だろう。

今にも飛び出してきそうなシャンパンのコルクを抑えるように、喉元までせり上がってくる追及の言葉を全力で封じる。口を開けば、その隙間から見苦しい言葉がとめどなく溢れてきそうだ。

—玉置さん、何か言ってよ・・・—

沈黙は金だなんて嘘だ。

アキコが問いただす汚れ役を買って出たら、玉置は被害者ヅラして悲痛な表情で顔をしかめるのだろうか。それとも「34歳のくせいに、面倒な女」と見限られ、一口飲んで求めていた味と違った缶コーヒーのように、アキコのことをポイするのだろうか。

恋愛は常に想いが強い方が圧倒的に不利なのはわかっている。説明責任のボールを持っているはずの玉置が沈黙を守れるのは、想いの差に玉置自身が気付いているからかもしれない。アキコは、翔くんの言った「清濁併せ呑む」という言葉を頭の中で何度も何度も反芻して、忠犬ハチ公のように従順な犬となりさがった。


どれくらいの沈黙が流れただろう。ピンと張り詰めた緊迫さえ漂う無言の時間を文字通り破ったのは玉置だった。

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