汐留タラレバ娘 Vol.8

汐留タラレバ娘:34歳独身女、ドッキドキのLOVEメール&ドライブデート・・・!

前回までのあらすじ

独身34歳3人組、アキコ、貴理子、なお美。化粧品会社で、経理課長代理として働く島田アキコは、仕事もそこそこ順風満帆だが彼氏はいない。そして3人揃って左手薬指の予定もない。「最後の独身男」として女性たちから絶大な人気の玉置孝太郎からデートに誘われる。玉置のエスコートに完全舞い上がり恋に落ちるアキコ。しかし、翌日、浮かれて会社に行くと、後輩の藤咲愛が、玉置とのデートを知っていることをほのめかす。玉置と、愛の関係を疑う、アキコはその夜、なお美からふたりの噂があることを知る。落ち込むアキコの元に、玉置から連絡が・・・

前回:「清濁併せ呑む覚悟がなければ、一生独身だよ」


—そういえば、中目黒のイルミネーション、今年はどうなるんだろう。—

玉置からのLINEがきたアキコは気もそぞろになり、いてもたってもいられなくなり、2人にお礼を言って店を出た。

まっすぐに帰る気持ちにもなれず、ソワソワする気持ちを抑えるために目黒川方面へと歩く。青葉台エリアは少し心細くなるほど人もまばらで、色付いているのか枯れているのかわからない葉が初冬の冷たい風に揺られカサカサと音を立てる。

去年から始まった目黒川沿いのイルミネーション。青い電飾が巻きつけられた木々が延々と500mにわたって続くその光景は圧巻で、土日の点灯が中止になるほど人で溢れていた。冬の冷たい空気には、心に火が灯るような暖かい豆電球のような光でなきゃ、思っていたアキコだが、水面に反射して辺り一面青一色となる幻想的な光景に、一目見るなり「青いイルミネーションもいいものだ」と意見を翻したものだ。

冬のイルミネーションはいい。同じ目黒川でも、アキコは桜の時期、心穏やかに桜を見ることができない。今が盛りの桜を見ているのは、いつ散ってしまうのかと心が波打ち、いざ散り出せば、禿げ散らかしたような汚い桜に心が痛むからだ。

桜が散り葉が茂り色づき落葉した後も、光を纏うことで、「綺麗だね」と言ってくれる人がいるのだ。今が盛りを過ぎたアキコたち34歳も、その知恵にあやかり、人工的な光を纏えば、発光するように輝く20代に勝てるはずだ。

計算するのも小賢しい。まだ、恋人にもなってないのに、愛や、他の女たちの陰に怯えるなんて取らぬ狸の皮算用もいいところだ。大人の女性らしく潔くシンプルに行くのだ!アキコは、携帯を取り出すと玉置に返信した。


—玉置さんのご都合よいときでいつもで。—


心に正直に行動できた自分を褒めてあげたい。うふふと、少しだけ悦に入ったところ、玉置から間髪入れずに返信がきた。


—いつ"も"で。笑 そのナチュラルボーンなおとぼけ感、好きだなぁ笑—


はっとして自分の文面を見返して誤植に気づく。大人の女らしくかっこよくと気取ったものの自分の鈍臭さに赤面する。玉置の前では一生懸命になればなるほどから回っていく。それでも、そこを好きだと言う玉置の3文字を都合よく解釈して、アキコの心の中は、じんわりと温かくなりつい「ドッキドキ!LOVEメール」を口ずさむ。

このドキドキは、なぜ気持ちいい 何度も同じメール 見ちゃってる この感じ・・!


—じゃあ、土曜日とかどうかな?ちょっと遠いけど鎌倉にうまい店あるから夕方からドライブがてら—


鼻歌が一転、目黒川に、アキコの悲鳴が響いたのは言うまでもない。

【汐留タラレバ娘】の記事一覧

もどる
すすむ

おすすめ記事

もどる
すすむ

東京カレンダーショッピング

もどる
すすむ

ロングヒット記事

もどる
すすむ