第6話:年収320万円本命彼氏、貞操の危機
葉子が才島と話に興じた翌日の夜。京太郎は会社からほど近い恵比寿にある居酒屋『しん』にいた。同席しているのは会社の後輩、倉田紗耶香だ。
紗耶香は京太郎より4歳年下で、入社2年目の24歳。営業事務をしているが、担当者が不在中、顧客からの長時間にわたるクレーム電話に捕まってしまい、ちょうど帰社した京太郎が見かねて電話を交代し、担当者の代理として謝罪した。
「気にしなくていいから」
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第7話:恋人宅に向かうと、そこには別の女…
「急用を思い出したからお先に失礼するわ。また、近いうちに」
そこまでの支払いを済ませると、葉子は店を後にしてタクシーに乗り込んだ。
(給料日前の京太郎は元気がなくなるから、そうだ、明日はおいしいお肉でも食べに行こう)
京太郎だって会いたいと思ってくれているはず。驚かせてしまおう――あえて葉子は連絡せず、京太郎宅へと向かった。
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第8話:甲斐甲斐しく手料理を並べた先に、昨夜の女の痕跡が……
紗耶香が洗面所で顔を洗う水音を聞きながら、京太郎はコーヒーを淹れていた。特に好きでも嫌いでもなかったが毎朝飲むようになったのは、葉子の影響だった。いまドリップしているのも、「朝、一緒に飲もう」と、葉子が買ってきてくれた品だ。
(昨日、チャイムを鳴らしたのが葉子だとしたら、ちゃんと帰れただろうか)
コーヒー粉が湯を吸収し、放つ芳香を嗅ぎながらふと、葉子が心配になる。京太郎と葉子は合鍵を渡しあっていないからこそ昨夜、紗耶香を泊めても事なきを得ずにすんだが、夜中に独りで自宅に戻ったであろう恋人が、ただただ気がかりでならない。
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第9話:勝手に合い鍵を作った、恐怖の元恋人と鉢合わせ!
いい男は、女が隠し持つ弱さを引き出してしまうものだと葉子は痛感する。低く響く甘い声、あたたかな体温、触れ合った瞬間、お互いの肌がぴたりと吸いつき合うような密着感、匂い。
京太郎をまるごと受け止めると葉子はいつも、自分のミスを許さず男と肩を並べて仕事をする、働きマンという仮面であり防御壁をはがされてしまう。
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