黒塗りの扉 Vol.4

あの男の嘘を暴いてやりたい。過去の秘密を知られ不信感を募らせた女の、止まらない疑心暗鬼

東京のアッパー層を知り尽くし、その秘密を握る男がいる。

その男とは…大企業の重役でも、財界の重鎮でもなく、彼らの一番近くにいる『お抱え運転手』である。

もしもその運転手が…雇い主とその家族の運命を動かし、人生を狂わせるために近づいているのだとしたら?

これは、上流階級の光と闇を知り尽くし支配する、得体の知れない運転手の物語。

ようこそ…黒塗りの扉の、その奥の…闇の世界へ。

これまでのあらすじ


自らの手腕で成り上がった男・環利一(たまき・としかず)。環が、政治家の田宮郷太郎(たみや・ごうたろう)とのポーカーの勝負に買ったことで手に入れたのが、専属運転手の鈴木明(すずき・あきら)だった。

だが実は鈴木は、ある人物からこんな依頼を受けていた。

『環利一を徹底的に壊して下さい』

利一は、妻・聡美と鈴木明の関係に不信感を募らせ、2人が乗る車に監視カメラを仕掛けるが、あっさりと鈴木に暴かれてしまうのだった。


「聡美の車に、隠しカメラ…? どこに?」

利一は驚いた表情を作り、聞き返してみせる。

そのカメラがどこに仕掛けられていたのか、本当は利一が一番よく知っているのだが。

鈴木明と一緒にいる時の妻が、どんな様子なのか。それを自分の目で確認するために、利一がカメラを仕込んだのだから。

「それが…設置されていた場所が、実に巧妙で驚きました。デジタル時計に埋め込まれていた…というより、時計自体が隠しカメラ用に設計されていました。

犯人は時計ごと取り換えたとしか思えませんが…。環さま、この車の時計は、最初からこれでしたか?」

鈴木の質問に利一が、車は何台もあるから全部の時計までは覚えていないな…とごまかす。そして、鈴木の白い手袋の上に乗せられた、そのデジタル時計を見た。

破壊され、カメラ部分が取り出されたデジタル時計。

これは運転席と助手席の間に取り付けられていたもので、外から見ればごく普通の時計でしかなかったはずだ。

中に仕込まれていたカメラのための穴はわずか数ミリ。その穴は電源ボタン、デジタル文字の色を変えるためのボタンなど、いくつかのボタンの装飾で巧妙に隠されていた。

利一は、業者がこのカメラを聡美の車に設置する場に立ち会ったのだが、そのよくできた作りに驚き、本当にカメラが入っているのか確かめたくらいだった。

だから、元々この車にはほとんど乗らない聡美が、それに気がつくわけはなかったし、鈴木に至っては初めてこの車に乗ったはず。

―鈴木はどうやって、カメラに気がついた?

そう思いながらも平静を装い、鈴木の質問にこたえる。

「ほら、俺ってば敵だらけだから、盗聴とか盗撮とかされるのべつに初めてじゃないけど、今回のカメラはすごいな。こんなのあるんだねー」

そう言いながら利一はわざと、鈴木の手にあったカメラをつまんで、触ってみせる。仕組みを確かめているように見せて、目的は、鈴木の前でこのカメラに指紋をつけること。

さっき、誰の仕業か特定するために指紋を調べさせよう、と鈴木は言った。

カメラを業者に設置してもらう時、利一もカメラに触った可能性がある。

業者の指紋が出たところでその人物が特定されることはないだろうが、カメラから利一の指紋が出てはまずい。だから今、鈴木の目の前で触っておく。そうすれば利一の指紋が出てきたところで、ごまかすことができる。

十分にベタベタ触った後、鈴木にカメラを返しながら、利一はわざと軽い口調で質問した。

「いやあ、助かったよ。まさか聡美ちゃんの車が狙われるなんて思わないからね。明ちゃんてば、さすがだね。でもどうやってこのカメラに気がついたの?」

その問いに鈴木は、ああ、それは簡単なテクニックですよ、とにっこりと笑って、こう言った。......

黒扉



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