リアル働きマン葉子!黒革の編集手帳 written by 内埜さくら Vol.6

リアル働きマン葉子!年収320万円本命彼氏、貞操の危機

前回までのあらすじ

食雑誌である『月刊東京ウォーキング』の編集者・高嶋葉子(35)は、この道10年目の中堅、未婚、彼氏アリ。

学生時代の友達から無理やり紹介された才島孝央とディナーを共にし、心が揺れる。

年収320万円の年下彼氏である橘 京太郎(28)は、実家の会社を将来的に担っていく幹部候補生。忙しすぎる葉子のドタキャンに対しても、寛大で愛情深い。

ただ一抹の寂しさは感じているようで……。

葉子が才島と話に興じた翌日の夜。京太郎は会社からほど近い恵比寿にある居酒屋『しん』にいた。同席しているのは会社の後輩、倉田紗耶香だ。

紗耶香は京太郎より4歳年下で、入社2年目の24歳。営業事務をしているが、担当者が不在中、顧客からの長時間にわたるクレーム電話に捕まってしまい、ちょうど帰社した京太郎が見かねて電話を交代し、担当者の代理として謝罪した。

「気にしなくていいから」

何度か辞したが、「お礼をさせてください」と紗耶香が折れず、今夜2人は酒席をともにしている。とはいっても支払いは年上である自分が持つつもりだが、日ごろ、人のぶんまで仕事をして懸命に一人前になろうと努力している、真面目な紗耶香だ。誘ったのだから全額払うと言い出しかねない。

同じ会社に勤めていれば互いの給料の程度は知れているため、割り勘だとしても紗耶香の負担にならない店を、今日はチョイスした。

誘われたからとはいえ、今夜、紗耶香とこうして酒を飲んでいるのは、少し寂しかったからかもしれない——。1週間以上会えていない葉子と最後の電話をしたとき、こちらが話し終える前に切られてしまったことを思い出し、忙しいんだから仕方がないと気持ちをなだめていると、質問された。

「橘さんって、彼女いるんですか?」

どうやら紗耶香は、酒は好きだが強くはないらしい。問われるまま、7歳年上の葉子とつき合って2年経つことや葉子の仕事について話したが、社内の人間にプライベートを極力明かしたがらない京太郎の私生活に切り込んでくることが、それを証明している。

話題を変えるために好物の豚足を勧めると、「一度食べて苦手だったんですけど、これ、皮がパリパリしてておいしい!」と、パクついている。苦手な食べ物を勧められて従順に挑戦するのは、若さがもたらす柔軟性からか。昔を思い出していると、急にしんみりした口調で紗耶香がつぶやく。

「橘さんの彼女がうらやましい……」

今夜はもう帰ったほうがよさそうだ。放蕩の限りを尽くして大学を2年、留年したが、その中には当然、女遊びも含まれている。だからこそ、この後の展開が手に取るように読める。帰宅を促し出口に向かうと、やはり紗耶香が「私が払います」と強情を張ったが、いなして支払いをすませた。年下で、しかも酔っている女性に会計させるのは気が引ける。

案の定、紗耶香はしたたか酔っているようで、足取りがふらついていた。早く帰さなければ。タクシーを拾おうと道路に歩を進めた瞬間、背中に抱きつかれた。

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