SPECIAL TALK Vol.124

~丹後を日本のサン・セバスティアンに。地方の「お酢屋」がまちづくりを考える~

金丸恭文氏 フューチャー株式会社 代表取締役会長兼社長
大阪府生まれ、鹿児島県育ち。1989年起業、代表取締役就任。


徐々にかたちが見えてきた風土を生かした食の街づくり


金丸:これから、地方は何をしなければいけないかというと、「東京至上主義を捨てる」ことだと思います。ワインでいうところの「テロワール」を大事にして、その土地だからこそできるものや、その土地の人びとを売っていく。日本各地でこうしたマーケットメイクができれば、必ずその土地に魅了された外国人の固定ファンが地域ごとに付くはずです。

飯尾:そういう意味では、丹後はすでに動き出しています。まちづくりというか、「移住させ屋」として、私たちも動いているんです。

金丸:「移住させ屋」ですか?

飯尾:はい。飯尾醸造が運営しているお店を例にあげると、古民家を改装した『aceto(アチェート)』(イタリア語で「酢」)というレストランに、東京でシチリア料理のシェフとして活躍していた重 康彦さんをお呼びしました。その民家には蔵もあって、蔵のほうは鮨割烹の『西入る』という店が入っています。こちらの親方は、ポルトガル人のリカルド・コモリさんです。

金丸:ポルトガル人で鮨の職人ですか?

飯尾:それも、「なんちゃって」じゃなくて、銀座や青山、そして京都の正当派の懐石料理店で修業された方なんです。先日は『ゴ・エ・ミヨ』にも掲載されましたが、懐石料理のジャンルで出てくる欧米人は、彼だけです。面白いのが、リカルドさんは一度宮津に来ただけで、移住を決めてくださいました。

金丸:すごい勢いで街が面白くなっているじゃないですか。

飯尾:あと2024年8月には、南フランスから宮津に一度も来たことのないフランス人シェフが移住してきて、11月にレストランをオープンさせたんですよ。パトリス・ジュリアンさんという、以前、白金でカフェレストランをやっていた方ですが、8年前に東京を離れてフランスに戻っていたんです。

金丸:その方を日本に連れ戻した。いったいどうやって?

飯尾:それが、ある日電話がかかってきて「宮津が面白そうだから、物件情報を教えてくれないか」って。

金丸:「宮津が面白そう」だなんて、どこで仕入れたんですかね。

飯尾:それが彼の情報源は、私と妻のSNSだけなんです。

金丸:ええっ(笑)。ものすごく身軽なのか、飯尾さんの情報発信が巧みなのか。

飯尾:もともと妻の知り合いということもあるんですけど、私たちは「丹後を日本のサン・セバスティアンにする」という目標を掲げているんですよ。それを魅力に感じてくれたようでした。ヨーロッパに行く機会があったので、直接お会いして物件情報をお見せしたら、翌日には「ここに決めた」と。

金丸:年間300万人が訪れるというのもあるでしょうが、海も近くて自然豊かという環境は、やっぱり東京にはないじゃないですか。今のお話だけでも地方の可能性をますます感じました。ところで、奥様とはどこで出会ったんですか?

飯尾:東京に出張したときです。今後10回生まれ変わるとしたら、9回は結婚したいくらい、素敵な女性なんです。

金丸:すごい。そこまで言えるほどゾッコンなんですね。ところで、残りの1回は?

飯尾:5回目か6回目ぐらいになったら、誰か違う人も見てみたいと思うかなと(笑)。

金丸:ちなみに奥さんも「10回中、9回は」とおっしゃっていますか?

飯尾:直接は聞いたことはありません。ただ、多分「楽しい人生だ」とは思ってくれているでしょうね。いろんな出合いもありますし。

金丸:お酢だけでなく、いろいろな食を堪能するために、私も近々、丹後に行かなければ。

飯尾:ご案内しますので、ぜひお越しください。

金丸:そのときはよろしくお願いします。今日はお忙しいところ、本当にありがとうございました。

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