SPECIAL TALK Vol.124

~丹後を日本のサン・セバスティアンに。地方の「お酢屋」がまちづくりを考える~

令和のニューリーダーたちに告ぐ


日本三景のひとつ、天橋立で知られる京都府宮津市。人口1万6,000人ほどの街に、酢の蔵元、飯尾醸造がある。

飯尾醸造の作り出す酢が鮨の名店に引っ張りだこの理由は、創業130年の老舗というだけではない。

高度経済成長期から無農薬の米を酢の原料として使い続け、一般に流通する酢の何倍もの米を使った、米酢本来の味わいが高い評価を受けている。

5代目当主である飯尾彰浩氏が家業に入ったのは、約20年前。長い歴史を地域とともに歩んできた蔵元として、酢の生産だけでなく、食をテーマにまちづくりにも取り組んでいる。

飯尾氏の挑戦から、日本の食や地方都市が持つ可能性を紐解く。

飯尾彰浩氏 1975年、京都府生まれ。東京農業大学大学院修了後、2000年に東京コカ・コーラボトリング入社。マーケティングや営業教育に従事。2004年に5代目見習いとして家業に入り、2012年より現職。伝統的な製法を引き継ぎながら「富士酢プレミアム」や「ピクル酢」といった新商品の開発、2017年にはイタリアンレストラン『aceto』の運営など、多様なアイデアを生かした経営を実践する。


金丸:本日は株式会社飯尾醸造の5代目当主である飯尾彰浩さんをお招きしました。お忙しいところありがとうございます。

飯尾:こちらこそ、お招きいただきありがとうございます。

金丸:今日の対談の舞台はオープンから約3年、白金高輪の『鮨 無何有(むかう)』です。「無造作」や「無作為」という言葉のように、何にも捉われない、あるいは無から有を生み出すような料理を提供したいという思いを込めた店名だそうです。

飯尾:大谷石で作られた空間も素敵ですね。料理もとても楽しみです。

金丸:ところで、こちらのお店では飯尾醸造のお酢を使用されているそうですね。

飯尾:はい、ありがたいことに。

金丸:実は私、今日お話を伺うにあたって、飯尾醸造の「富士酢プレミアム」をテイスティングしてきたんです。

飯尾:そうなんですか。ありがとうございます。

金丸:ワインと同じやり方でテイスティングしたんですが、もう一発でわかりましたね。正直、お酢にそんな違いがあるのかなと疑っていたんですが、味といい香りといい、明らかに違いました。

飯尾:香りにも着目していただいて嬉しいです。先代である父と私の二代にわたって、いかに良い香りのお酢を作るかが課題でしたから。

金丸:それで出来上がったのが、「富士酢プレミアム」なんですね。飯尾醸造では農薬不使用の米を使ってお酢を作られています。今日はお酢の話や、飯尾さんのこれまでの歩みをじっくりと伺っていきます。どうぞよろしくお願いします。

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