この季節が来るたびに思い出す、あの人のこと。切ない思い。苦しくて泣いた夜…。
うだるような暑い夏が今年もやってきた。
これは、東京のどこかで繰り広げられる夏の恋のストーリー。
▶前回:同棲5年目に突入…結婚したい31歳の女が彼氏との今後をジャッジした浅草デートの結末
麻布十番の夏/美鈴(28)
「あ、もしもし美鈴ちゃん?今、少し話せる?」
「うん。大丈夫だよ」
まだまだ暑い日が続く、8月後半のある日。
自宅での仕事を終え、デリバリーアプリで夕飯を注文した後、福光朔也から電話がかかってきた。
「明後日なんだけど、麻布十番祭り行かない?」
「え!行く行く!行きたいと思ってたの」
今一番会いたい人からのデートの誘いは、どんなビタミンよりも元気になれる。
でも、電話の奥がザワザワとうるさい。どうやら朔也は誰かと一緒にいるようだ。
「よかったぁ。俺の友達と、そいつが女の子も連れてくるんだけど、いい?」
― え!?…嫌だ。
と、言いたいのをグッと飲み込んで「いいよ」と返答するのと同時にインターホンが鳴った。
「あ、チキンカレー届いた!」
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