夏の恋 Vol.21

「麻布十番祭り行かない?」好きな男性から誘われた28歳女。でも待ち合わせ場所には浴衣の女性が…


「おなかすいたぁ…」

玄関に届いた夕食をピックアップし、急いでリビングに戻る。

そして、冷蔵庫から取り出したローヌ産のロゼワインをグラスに注ぐ。

今日は『オーベルジーヌ』。

最近、ここのチキンカレーと辛口のロゼを合わせるのにハマっていて、家でラクしたい時はこれと決めているのだ。

「うん、美味しい」

朔也は、先月の初めにマッチングアプリで出会ったコンサル勤務の32歳。

私は最初のデートから、朔也のことをいいなと思っていた。

だから3回目のデートで、白金高輪にある彼の自宅に行って男女の仲になった。

でも、やっぱり付き合う前にまずかったか…と反省している。

朔也から「付き合おう」などの言葉はなく、なんとなく気まずい空気が流れたまま今日に至っているからだ。

“付き合う前に一線を越えてはいけない”

耳が痛くなるほど聞いているワードのはずなのに、どうして、過ちを犯してしまうのだろう。

― この状況から彼女に昇格するのって、難易度高すぎるよね。


私は、身長160cmで45キロ。骨格ストレートのどこにでもいそうな28歳。

Webデザイナーだからか、ファッションセンスや部屋のインテリアなどは褒められる。

― でも、それ以外はなんもないや…。

朔也の出方を待ってしまうのは、この自信がない性格のせいかもしれない。

私は、付け合わせのポテトにバターを塗りながらため息をついた。

1年前に別れたモラハラの元カレ。その人から浴びせられた言葉の数々は、私から自信を失くすのに十分すぎた。

この記事へのコメント

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No Name
また上手くいかない恋愛話かーーと思って期待せずに読み進めたら、すごいいい話じゃない🥺 追いかけてきた彼も、おじいちゃんドライバーの気遣いも...沙羅以外みんな好印象だったし。
2024/08/26 05:1559返信2件
No Name
一話ごとに書き手が異なる連載だけど、今日のライターさん好きだなと思った。私も最近新しい出会いがあったので、すごく感情移入してしまった。美鈴のように過去の恋愛でトラウマを抱えて自信も失くしていたので自分と重なる部分も多く。 でもこのお話から勇気をもらえた気がする。
2024/08/26 05:2943
ブラボー!
一旦気持ちがどん底になり、そんな自分を惨めで滑稽にも思えて笑いたくなった…からの、急展開ハッピーエンド♡一話完結でこんな綺麗にまとめるなんて素晴らしいです。ペンネームとか似顔絵だけでもいいからライターさんの情報(過去連載含む) あればもっと良かったけれど。料理やワインを丁寧に描いているので、もしかしたら「そういうとこで振られる男」か「レストランストーリー」のライターさんでしょうか。
2024/08/26 05:5839
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