「おなかすいたぁ…」
玄関に届いた夕食をピックアップし、急いでリビングに戻る。
そして、冷蔵庫から取り出したローヌ産のロゼワインをグラスに注ぐ。
今日は『オーベルジーヌ』。
最近、ここのチキンカレーと辛口のロゼを合わせるのにハマっていて、家でラクしたい時はこれと決めているのだ。
「うん、美味しい」
朔也は、先月の初めにマッチングアプリで出会ったコンサル勤務の32歳。
私は最初のデートから、朔也のことをいいなと思っていた。
だから3回目のデートで、白金高輪にある彼の自宅に行って男女の仲になった。
でも、やっぱり付き合う前にまずかったか…と反省している。
朔也から「付き合おう」などの言葉はなく、なんとなく気まずい空気が流れたまま今日に至っているからだ。
“付き合う前に一線を越えてはいけない”
耳が痛くなるほど聞いているワードのはずなのに、どうして、過ちを犯してしまうのだろう。
― この状況から彼女に昇格するのって、難易度高すぎるよね。
私は、身長160cmで45キロ。骨格ストレートのどこにでもいそうな28歳。
Webデザイナーだからか、ファッションセンスや部屋のインテリアなどは褒められる。
― でも、それ以外はなんもないや…。
朔也の出方を待ってしまうのは、この自信がない性格のせいかもしれない。
私は、付け合わせのポテトにバターを塗りながらため息をついた。
1年前に別れたモラハラの元カレ。その人から浴びせられた言葉の数々は、私から自信を失くすのに十分すぎた。
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