2024.08.05
東京都内の中華が成熟したいま、定番に現代風のアレンジを加えた次世代の中華が増えている。
既存の枠や概念に捉われない、目新しさを感じられる6軒を“ネオ”なポイントとともにご紹介!
代官山に飲みに行く人は多くない。そもそも酒場自体が少ないからだ。
飲食店にとってそんなハンデともいえるロケーションを、「逆にブルーオーシャンと捉えました」とは『代官山ライチ』のオーナー・染谷崇裕さん。
ラムに特化した中華酒場のメニューがラインナップ
わざわざ足を運んでもらえる店になるべく、苦手な人が一定数いたとしても尖ったメニューで勝負すると決め、選んだのがラム肉だ。
中華ではメジャーな食材ではあるが、まだまだ“ガチ中華”寄りであるラム肉。そこで、“町中華”をイメージし、カジュアルで気負わないメニューを料理長と開発。
約40のメニューのうち半数はラム肉を使うというこだわりが潔い。
肩ロース、もも、タン、ハツという希少部位を低温調理で提供。オリジナルの麻辣ソースがアクセントに。
「ラムたたき 盛り合わせ」¥1,200。
炭酸系と相性抜群の「ラムスペアリブのスパイシー唐揚げ」1本¥550。
旨みが強い腕の部分をミンチにし、キャベツとねぎでシンプルに仕上げた「ラム餃子 どっさりパクチーのせ」¥550。
打ちっぱなしのコンクリート空間の中央に掲げられた黒板メニューや妖しく光るネオンサイン、冷蔵庫からゲストが直接酒を選ぶスタイルなど、“こなれ感”がまた代官山らしく洒脱。
「ガチ中華+町中華」のハイブリッドな一軒として、今後の“ネオ”な中華を牽引する存在になりそうだ。
オーナーはIT企業出身のビジネスマンという意外性
染谷さんは楽天やリクルートでWEBプロデューサーとして活躍した人物。
会社員時代、自分で立ち上げたブランドが認知されていく面白さに目覚め起業を決意。高校の同級生だった料理長を誘って戦略的にこの店を立ち上げた。
「ガチ中華+町中華」は彼のアイデア。
酒場使いができる中華は、どのエリアでも大盛況。だが、毎日でも通いたくなるかというと、コッテリの脂や固定化された定番メニューを前に二の足を踏んでしまう人は多いだろう。
大人の理想は、その時々で変わる旬の食材を使った一品が並び、胃袋の具合で軽めも重めも調節できて、さらに旨い酒が並ぶ店。
そんな都合のいい店はそうそう見つからないからこそ、『MUDAN JIANG』は貴重な存在だ。
ビストロのような、こなれた黒板メニューの創意工夫が凄い
「旬の食材を中華で味わおうと思うと高級店でのコースになってしまう。かといって町中華のようにドリンクの選択肢が少ないのも困る。酒呑みの自分が通いたい店を考えたら、このスタイルになった」と笑うのはシェフの金岡永哲さん。
『赤坂璃宮』で7年腕を磨き、正統派の広東料理が技術のベースにあるから、進取の気性に富んだメニューはいずれもかなりの本格派。
「旬の春巻き」2本¥1,210。
この日の食材はホタルイカと生しらす。6月からはいちじくとブルーチーズ、豚肉の春巻きが登場。
酒のアテになる麻婆豆腐がコンセプトの「海鮮と野菜のマーボー」¥1,430。
高級中華の定番“清蒸鮮魚”をカジュアルに解釈した店の看板メニュー。
「魚とたっぷり野菜のセイロ蒸し」¥1,650。
昨今のトレンドを押さえた国産ボトルの品ぞろえが充実
仕事帰りにふらりと立ち寄りたくなる“サードプレイス”な中華酒場という存在が新しい。
「渋谷の注目エリアに店を出すなら、ただの居酒屋じゃ面白くない。大人が満足できる中華のエッセンスを入れたかった」と話すのは、『タートル』のオーナー・久我耕輔さん。
ネオ居酒屋の仕掛け人として千歳烏山『酒場アカボシ』や三軒茶屋『赤星』を展開する人物だ。
中華なのにあの有名和食店監修という料理のクオリティに驚かされる
メニュー開発は、親交の深い和食料理人の浅倉鼓太郎さんとともにミシュランの星付き店を視察。
「よだれカンパチ」など魚介を使ったメニューを豊富にし、酢豚や雲白肉などの定番は独自の新しい解釈で提案する。
ドリンクは中華の油を切ってくれる“芋のソーダ割り”がオススメ。
芋焼酎のラインナップは、店内のモザイクタイルと同様に「カラフル」がキーになっており、白芋、紅芋、紫芋、オレンジ芋など風味別にオンメニュー。
グラフィカルなラベルのものばかりがセレクトされている。
どんなシーンでも使える、豊富な席種が地味に嬉しい
広い店内はさまざまなゾーンに分かれており、立ち飲み席やカウンター席、ボックス席といった多様な席種がそろう。
立ち飲み席の奥に間仕切りのようなガラス扉を設けているのは、「テラス席を店内に作りたかった」という久我さんの思いから。
店内の手前側と奥側で同じカラータイルを使用するなどして、随所で“空間を繋ぐ”工夫が施されている。
ひとりでの立ち飲みからデート、仲間との飲み会まで、オールマイティに楽しませてくれる人気店だ。
雀荘を改装した酒場……それだけで、他にない存在と分かる。『ジャンソーアタル』は、2021年のオープン以来、北千住への呼び水となるほどの人気店だ。
このシチュエーションだけで気持ちが昂ぶってくるが、店があるのが北千住駅から続く飲み屋横丁(通称:飲み横)の最奥部というのも、心惹かれる。
雀荘の怪しげな雰囲気を活かしたエッジィな内装
店内をのぞくと、麻雀卓がテーブルに使われていたり、“雀荘當”のネオンが光っていたりと、令和から昭和にタイムスリップしたかのよう。
その上、連日立ち飲みスペースまでぎっしりの盛況ぶりだというから驚く。
鉄板で仕上げるスペシャリテは“マジで鉄板”!
そんな空間で味わいたいのはスパイスの効いたつまみや、鉄板焼き。
北千住で人気の『酒呑倶楽部アタル』の系列店だけあって、酒飲みのツボを押さえたメニューが心憎く、一品¥380〜の安さも◎。
上がステーキのような焼豚が美味しい「焼豚ビーフン」¥825、下がヨーグルトソースとサルサソースで食べる「スパイスラム焼」¥880。
「牛ウニ焼売」(¥858)は牛肉のミンチとウニで中華風ウニクに。
自家製漬け込みサワーやナチュラルワインがグイグイ進むこと間違いなし。次の週末は北千住で非日常を!
巣鴨駅南口の先に広がる大和郷は、「六義園」を中心とし、かの岩崎弥太郎も愛した高級住宅地。その近くに、カフェのように佇む中華が『シノワ エトワール ヴェリテ』だ。
温もりのある木の扉を開けると、そこに現れるのは、ナチュラルでクラシカルなインテリア。
これにはオーナー和田真実さんの「とにかく居心地のいい空間にしたかった」との思いが込められている。
しかし、その見た目のイメージとは裏腹に味は本格派。
とことん実力派!な名店出身シェフのディープな味わい
シェフの星 久人さんは『銀座アスター本店』で料理長を務めたあと、『GINZA沁馥園』でも料理長に。
中国の特級厨師などから教わった秘伝の技を取り入れ、スパイスや酒を巧みに使って味を染み込ませ、鮮烈だがどこか優しい味に仕上げられている。
「6種類色々愉しめる前菜の盛り合わせ」¥1,540(写真は2人前)。
「酔っ払い海老」などワインを誘う前菜がずらり。
「岩手県産岩中豚の黒酢豚」(¥1,980)は香料煮をして揚げる本場の味。
「夏野菜の麻辣おこげ」(¥2,420)は土鍋で。
ワインはウォークインセラーからジャケで選ぶ!
それらと合わせたいのがナチュラルワイン。ウォークインセラーから“ジャケ”で選ぶ、その楽しさもまた人気の理由。
これぞ、“令和の町中華”を体現する一軒なのだ。
新しい中華の波を感じるなら、渋谷百軒店の『KAMERA』へ。
もはやネオ酒場の代名詞ともなったこの店には、連日、界隈のクラブや飲食店の行き帰りに若者がふらりと訪れるほか、東カレで取材して以来、成熟した大人も足を運んでいる人気店だ。
フレンチシェフ監修の創作料理は驚きの美味しさ
店の看板メニューは熟成焼売とお茶ハイ。
オーナーである目良慶太さんとフレンチシェフの亀谷 剛さんがアイデアを出し合い、定番の焼売とドリンクを進化させた。
料理は何種類ものスパイスを調合して発酵させたり、自家製の調味料を仕込んでいたりと手が込んでいる。
亀谷シェフは、発酵の技術を取り入れることで、旨みを凝縮した焼売を完成。
「蟹とイクラの焼売」(¥1,100)は、山形豚のひき肉に15種類のスパイスを入れて、海の幸をトッピング。
3種類のきのこと岩海苔をガーリックオイルで炒め、アヒージョを包んで揚げたような味わいに。
「岩海苔ときのこの春巻き」¥715。
まるで“チーム友達”なスタッフがお洒落過ぎる
気さくなスタッフとの会話も楽しみのひとつで、音楽やファッションなど共通の趣味があれば、他のゲストを交えて会話が盛り上がることも。
そんな店内のムードもスパイスとなる“カルチャーのある店”は、まさに、中華の次世代的存在。
これまでウォークインのみだったが、今回初めて予約が可能に。デート利用にも安心だ。
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