2024.06.21
SPECIAL TALK Vol.117
「利他」に切り替えたから、ここまで歩いてこられた
金丸:それにしてもコーヒーって、面白いですね。コモディティな飲み物なんだけど、そこでの戦いってバラエティがあるじゃないですか。高級を目指す人もいれば、量でチェーン展開を目指す人もいるし、自分のこだわりの店を1店舗だけ持つ人たちもいる。
大塚:自分で商売をすると、あらためてベンツはすごいなと思います。「高級大衆車」という矛盾したことを商売として成立させていますから。
金丸:じゃあ、目指すはコーヒー業界のベンツですね。
大塚:そうですね(笑)。僕の妻がまたちょっと変わり者なんですが、ときどき鋭いことを言う人で。「フェラーリに乗ってるコーヒー屋のコーヒーは飲みたくない」って。
金丸:言われてみれば、たしかにそうかもしれない(笑)。
大塚:「コーヒー屋はスバルに乗るべきだ」って(笑)。そういう消費者に近い感覚を忘れないようにしたいです。
金丸:猿田彦珈琲にとって、ライバルはどこですか?
大塚:立地という意味で、一番の強敵はスタバです。だけど、コーヒーでいうと、僕らはかなり独自路線を走っているので、ライバルとも言いづらい。まあ、僕が敵視していなくても、コーヒー業界的には問題児扱いされていますし、ダース・ベイダーくらいに思われているかもしれません。
金丸:そんなに嫌われているんですか!?いったいどうして?
大塚:スペシャルティコーヒーの世界では浅いりが基本なんですが、僕らは深いりの苦いコーヒーも作るし、缶コーヒー「ジョージア」の監修なんかもする。業界のご法度みたいなことを気にせずやっちゃうので。「缶コーヒーとコラボなんて、邪道中の邪道だ」なんて言われました。
金丸:単なるやっかみでしょう。いろいろ言ってくる人たちには、言わせておけばいいですよ。
大塚:やっかみもあるかもしれないけど、僕が本当に分からないだけで、とんでもなく失礼なことをしているのかもしれません。それでも、実際に会った方は「ナイスガイでびっくりした」って言ってくれます(笑)。
金丸:日本って、業界の常識から外れたことをする人に対して、「場を乱すな」と怒る人が多い。でも、業界の常識と消費者が求めていることは必ずしもイコールではないし、業界内を見ているだけじゃ、イノベーションは生まれません。
大塚:きれいごとだとか、生意気だとか言われるかもしれないけど、僕はもっと利他的な考え方を当たり前にしなきゃいけないと思うんです。
金丸:これまでのお話を伺っていると、大塚さんが本気でおっしゃっているのがよく分かります。
大塚:「中二病」と思われるかもしれないけど、会社として本気で追求したいんです。僕が一番不幸だった時期は、「売れたい」という利己的な思いしかなかった役者時代です。創業してここまで来られたのは、資金繰りとか何も分からないところからたくさんの人に支えてもらったこと、そして「まずはお客さんに満足してもらおう」という利他的な考え方に切り替えることができたからだと思っています。
金丸:それは、サスティナビリティに通じるところでもありますよね。
大塚:そうですね。最近、僕も講演会をやらせていただく機会が増えました。特に大学で話すことが多いんですが、若い人たちに自分の考えを伝えたいし、彼らがどんなことを考えているかを知りたいというのが引き受ける動機のひとつです。
金丸:大塚さんのような若い方だと、学生も共感しやすそうです。
大塚:いま、猿田彦珈琲の従業員は500人を超えていますが、平均年齢は21〜22歳なんですよ。
金丸:めちゃくちゃ若いですね。
大塚:ほぼ大学生です。これは自慢になっちゃうんですが、採用倍率が20倍以上なんですよ。しかも、だんだん学歴が高くなってきていて。
金丸:最近の若者を見ていると、なりたい職業のトップに公務員が来るくらい安定志向が強いんですが、その一方で、仕事を通じて社会に貢献したいと考える人も多い。そういう人に大塚さんは刺さりそうですね。ちなみに大塚さんはいま、おいくつですか?
大塚:42歳です。
金丸:今後が楽しみですね。
大塚:今日はお話しできて本当に良かったです。金丸さんにコンサルしてもらったような感じで(笑)。
金丸:じゃあ、あとで請求します。コーヒー豆でいいですよ(笑)。冗談はさておき、大塚さんのような若い経営者が業界の常識を覆し、より良い文化をつくっていくことに期待しています。これからも陰ながら応援させていただきます。今日は本当にありがとうございました。
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