2024.06.21
SPECIAL TALK Vol.117
豆が高騰しても労働者に渡るお金は一部
金丸:ところで、いまさらですが、スペシャルティコーヒーとは、そもそもどういう定義なんでしょう?
大塚:人によっていろいろあると思いますが、僕らが考える一番大事なことは、生産者の顔が見えるということです。
金丸:トレーサビリティとサスティナビリティですね。
大塚:そうです。生産者の顔が見えれば、そこに直接対価を支払える。毎年品質を向上させて、美味しいコーヒーを作るための設備投資もできる。もうひとつが味ですね。端的に言うと、官能検査で80点以上のものを、スペシャルティコーヒーと僕らは呼んでいます。
金丸:官能検査って、どんな項目があるんですか?
大塚:まずは透明感。曇りガラスより透明なガラスの方が先にある情報が見えるのと同じように、ほこりっぽいものより透明感がある方がいい。次に甘さ。酸性の飲み物なので、酸の質がどうか。あとは滑らかさ、後味の余韻、口の中で感じる香り、それからハーモニーがどうか。もちろんバランスも問われます。そして、それらのすべてに対し、自分の好みと照らし合わせてどうか。総合して80点以上ならスペシャルティです。
金丸:フルーツから作る飲み物という点ではワインと同じだし、ワインに近い評価軸があるんですね。
大塚:最近は、80点以上というのが大前提になっています。さらにいろいろと工夫しているものが出てきてて、現地でシロップに漬けちゃうものもあったり。ある意味、しっちゃかめっちゃかになってきている状況です。
金丸:コーヒー豆業界にも、石油業界に君臨するメジャーのような存在がいるんでしょうか?
大塚:いますよ。世界のコーヒー専門の巨大商社は全部、ユダヤ人です。どこであっても、「あそこは◯◯系ユダヤ人の会社」というふうに。ユダヤ人がすごいのは、自分たちがもうかるだけじゃなくて、「商売相手にもちゃんともうけさせる」という意識が当たり前にある点です。
金丸:それは日本人にはない意識ですね。下請け企業を酷使し、相手の利益を奪って自分の利益にしている大企業も多いですから。
大塚:Win‐Winという言葉がありますが、日本企業で実践できているところはほとんどありません。それをちゃんと実践しているから、彼らはほんとにすごいと思います。
金丸:ところで、世界では、コーヒーの需要は伸びているんですか?
大塚:すごい伸びてますよ。特にブラジルですね。生産国でもあるけれど、経済事情が良くなってきたことで消費も伸びています。それに、インドや中国も人口の伸びにしたがって、消費量が増えています。
金丸:日本における需要はどうなんですか?
大塚:日本も伸びていますよ。コンビニコーヒーがだいぶ効いていますね。コンビニでコーヒーを買うのは、いまや日常になりましたし。
金丸:しかし、需要が伸びれば値段も上がりますよね。
大塚:実は昨夜も豆のオークションがあったんですが、特にパナマが高くなっていて、どうしちゃったんだというくらいの値段でした。ニューヨークの相場がおそらく、いま1キロ400円台ぐらいだったと思います。それがパナマで一番高かった豆は昨年、1キロ当たり150万円を超えちゃいました。
金丸:すごいですね。最近、ゲイシャという豆をよく聞きますが。
大塚:150万円という値をつけたのが、そのゲイシャなんですよ。なかでも発酵させた特別なロットでしたが。
金丸:それがちゃんと産地に還元されているならいいんですけど。
大塚:残念ながら、そこがまだまだできてないですね。農場の所有者はフェラーリやレンジローバーを乗り回しているんだけど、労働者には一部のお金しか渡っていない。現地に行くとそれがよく分かります。
金丸:なぜそんなに高騰しているんですか?
大塚:サードウェーブコーヒー屋さんのほとんどって、同じ農園に集中しちゃってるんですよ。だからその農園ばかり高くなって、結果、コーヒー1杯が千何百円になる。それだと、今度は消費国の方が奴隷になってしまう。
金丸:もっといいところで、バランスが取れないものですかね。
大塚:僕も本当にそう思います。だから自分たちは、まっとうな仕事をしているところとしか取引したくないし、関係者がそれこそWin‐Winになるように、自分たちがリードできる影響力を持ちたいですね。
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