2024.05.21
SPECIAL TALK Vol.116
オープン後20年経っても魅力を失わない六本木ヒルズ
金丸:入社後は、どんなお仕事をされたんですか?
辻:最初は発注を担当する仕入部に1年くらい、次に用地を仕入れる部署に3年くらいいました。あとはずっと開発部門です。新宿のプロジェクトやのちの表参道ヒルズにつながる事業に携わっていたのですが、「六本木ヒルズをやれ」と命じられ。とはいえ、まだヒルズの影もカタチもない段階です。権利者から再開発の同意を得るために駆け回るところからのスタートでした。
金丸:他のデベロッパーだと、そういうタフな仕事を業者に任せることも多いと聞きますが、森ビルは社員が担当するんですね。六本木ヒルズの場合、当時権利者は何人いたのですか?
辻:約400人です。それを8人のチームで担当していました。
金丸:麻布台ヒルズが300人とおっしゃっていましたが、それより多い。いまとなっては思い出せない人が多いかもしれませんが、あの辺りは、木造の小さな家がひしめきあうエリアでしたよね。
辻:再開発を進めるには、区域内のすべての権利者で組織する再開発組合が必要です。その設立にあたっては、権利者たちが共同で申請し、都道府県知事の認可を得なければいけません。
金丸:少数の人たちが自分勝手に再開発しても困りますからね。
辻:法律では、認可を得るために、区域内の権利を持つ人たちの「3分の2以上の同意を得なければならない」となっています。ところが六本木ヒルズの時、東京都は90%でも認可を出さなかった。「95%にしないとダメだ」と。
金丸:ええっ、そんなに厳しかったんですか!?
辻:計画に賛同いただいていない40人のうち、20人に納得してもらわなきゃいけない。これが至難の業でした。仲間で分担して毎日通いましたが、なかには会ってくれない方もいらっしゃいます。それでも会いにいく。再開発組合の設立が1日遅れれば、スケジュールが1日延びる。それを1年くらいずっとやって……。この時ばかりは、ストレスでちょっとおかしくなりそうでした。
金丸:そういうのって、損得の話ではなく、最後は気持ちですよね。再開発で住みやすくなるとか災害に強くなるとか、街の価値が上昇するとか言われても、気持ちが変わらない限りは「分かった」とはならない。人として認められるというか、「他でもないあなたがそこまで言うなら信じるよ」というところまで、相手の心を動かさないといけない。
辻:それでも続けられたのは、少しずつでも前進していると感じられたからです。夜中まで会社に詰めていて、誰か帰ってくると、みんなで「どうだった?」と尋ねる。「もらった」と言えば、大歓声でした。組合が設立されたあとも、それぞれの権利者の権利を「あなたは住宅のここ」「あなたはオフィスのここ」と、持ち分に応じて割り振る工程もありますし。
金丸:かっこいい図面を引くだけでは、新しい街はできあがらないということなんですね。
辻:そこで生きている方たちの人生を左右する責任の重さを、いつも感じていましたね。信じてもらったからには絶対に成功させて喜んでもらいたい、という強い気持ちでやっていました。
金丸:辻さんの原点となるような仕事だったんですね。だからこそ、オープンにこぎつけた時は、権利者のみなさんも辻さんも感慨深かったでしょう。
辻:すごく嬉しかったですよ。多くの方に関わっていただいたので。ただ、六本木ヒルズはオープンの時も、ちょっとした波乱含みでした。オープンしたのが、2003年の4月25日。ちょうど株価がバブル崩壊以来の最安値を記録した月なんです。
金丸:あの時は、日経平均株価が8,000円を割りましたからね。
辻:だから、その後も全然気を抜けなくて。
金丸:六本木ヒルズは、オープンからもう20年も経つんですね。
辻:普通、街や施設って、20年も経てば新鮮さが失われるじゃないですか。ところが六本木ヒルズは、いまなお元気です。2022年のクリスマス時期、12月24日の1日の来街者数が過去最高を記録しました。
金丸:えっ、オープン当初もすごい賑わいでしたが、それを上回っているんですか?それはすごい。けやき坂通りのイルミネーションは見事ですが、それだけで人が来るわけじゃない。裏に辻さんたちの熱意があるからこそ、街がいつまでも魅力を失わないんでしょうね。
辻:鮮度という意味では、やはりオープンの時が一番です。見慣れてくると鮮度は落ちる。だから私たちは、イベントやお店の入れ替えで鮮度を保ちながら、時間の経過とともに人々との“絆”を深めていこうと考えています。
金丸:街はつくっただけでは、ゴールにならないんですね。
辻:むしろそこからがスタートで、どんどん育てていく感覚です。20年経って記録を更新するのはそれがうまくいっている証なので、本当に嬉しいですよ。時間が経ってこそ、緑も育ちますし。
金丸:緑が多いのもヒルズの特長ですよね。
辻:これまでに12ヘクタールの緑を生み出しています。目に優しいだけでなく、実際にヒートアイランド現象の緩和にも役立っています。
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