ハラスメント探偵~通報編~ Vol.3

妻から心配されるほど激務に追われていたプロダクトマネージャーの男性。上司に相談を持ちかけたら…

身を粉にして働いているのに、上司はいきなり目前で叱責…


新製品の事前キャンペーンは、何とか間に合わせることができた。

メディアからの問い合わせも殺到し、会社としては相当な手応えを感じていたことは言うまでもない。

しかし、リリースを直前にして新製品のシステムにバグがあることが発覚し、野原をはじめとするシステムエンジニア数人は会社に泊まり込んでの復旧作業に追われた。

連日にわたって始発で帰宅し、着替えてまた出社していく野原を見送る彼の妻はある晩、夫に泣いて懇願した。

「さすがに、これでは貴方の体が持たない!」

妻の言いたいことは野原にもわかった。とはいえ、彼としても何も考えずに働いているわけじゃない。

「君の気持ちもわかるけど、会社はいまが大事な時なんだ。

それに、今の会社は前の会社と比べものにならないくらいに高待遇なんだよ。その恩には応えないと…」

そうなだめても、妻は引き下がらなかった。よほど考えたうえだったのだろう。

「そんなの、貴方が潰れてしまったら何の意味もない!」

妻の想いを知った野原の頭に思い浮かんだのは、自分の上司である取締役兼システム部部長の牧野雄二(仮名・35歳)だった。

牧野は会社の創業メンバーの1人でもあり、彼のデスクは野原と同じフロアにあって声がかけやすい。彼に相談すれば、業務量を調節できるかもしれない。そう思ったのだった。

そうして野原は、無事に新製品がリリースしたことを見届けたうえで牧野に相談を持ちかけている。

しかし、“その場”に居合わせた他の社員たちは、野原が相談を持ちかけるなり、怒鳴るように叱責する牧野の様子を目撃していた。


「君は今がどんな時か、わかって言っているのか?

これくらいの業務量すら耐えられないなら、マネージャー失格だ!

そもそも君には『パッション』が足りない。いいか『パッション』だ。それがあれば無理だと思うことも絶対に乗り越えられるはずだ。

面接時の『一緒に上場を目指したい』と言った言葉は嘘か!

いいか、よほどのことがない限り休むな!」

翌日、野原は人事部に行き、虚ろな目でこう訴えたという。

「牧野部長から社員全員の前で罵倒された。パワハラだ」

さて、貴方はどうジャッジする?


解決編へ続く。

結末が知りたい方はこちらから>>

▶NEXT:商社の花形部署に異動が決まり、喜んでいたのも束の間…。26歳男性がわずか数ヶ月で休職した理由

監修:株式会社インプレッション・ラーニング
代表取締役 藤山 晴久

全国の上場企業の役員から新入社員を対象とした企業内研修や講演会のプランニング、講師を務める。「ハラスメントに振り回されない部下指導法」 「苦手なあの人をクリアする方法」などテーマは多岐にわたる。

この記事へのコメント

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No Name
社長の金本さんに誘われて転職したなら、元々金本さんと親交が有ったのかな? なら直接相談する方が良かったような。 モラハラよりも業務量や残業代付いてるかどうか、妻が身体こわすと言う程朝から晩まで連日ってベンチャーにしてもさすがに大丈夫なのかそちらの方が気になった。
2023/07/05 06:1222
No Name
どうジャッジする?って…
色々と分かりにくい部分が多かった。野原の注意力散漫は元々か業務過多によるのかとか。社内での人間関係もイマイチつかめなかった。
牧野に相談したらきっと良いほうに向かうだろうと思ったんだよね?今迄は理解ある上司だったんだよね?
2023/07/05 05:2820
No Name
妻の叫びがナイス👍
2023/07/05 07:075
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