2023.05.30
マッチングアプリの答えあわせ【Q】~SEASON2~ Vol.1『山田健太郎:ありがとうございます!やっぱりお綺麗ですね』
― うぅ、2年前の写真だから、ちょっとだけ良心が痛む…。けど、私本人であることは間違いないしいいよね。
私はカルボナーラを食べ終え、冷凍庫から他社製品のアイスクリームを取り出す。
企画開発の部署に所属しているので、お菓子やアイスを食べることは仕事の一環だ。
これも市場調査のひとつ。マッチした彼もマーケの人っぽいし、対等に話せる女でいる必要がある。
私は仕事のことを考えながらアイスを食べ、健太郎とのアポに胸を躍らせた。
この人が、将来の旦那さんになるかもしれない。そう思うと、俄然アポにやる気が湧いてきた。
◆
健太郎が予約してくれたのは、赤坂のイタリアン『フィレモネ』。
美味しい生パスタが食べたいと言ったら、探してくれたようだ。
健太郎の家が赤坂だから選んだのかもしれないけれど、私のリクエストを聞いてくれたのは嬉しかった。
しかし、仕事が長引いてしまい待ち合わせの19時には間に合わない。
― 初アポで遅刻なんて印象悪すぎ。急がなきゃ。
私は電車内からLINEを送り、赤坂駅についてから小走りで店を目指した。
「健太郎さん、ですよね?」
窓側の席に座っていた健太郎は、写真よりもかっこよくて、正直めちゃくちゃタイプだった。
― あんなに一生懸命走らなければ良かった…!
会社を出る時に付け直した香水がほぼ飛んでしまったし、前髪も乱れていたからだ。
「綾子です。遅れてごめんなさい!」
「えっ?あ!綾子さん…ですか。はじめまして、山田です」
健太郎は、名字で名乗った。真面目で誠実そうで、私はますますテンションが上がる。
「何食べます?わぁ~!どれも美味しそうで迷うなぁ」
「綾子さんが食べたい物でいいよ。遠慮しないで」
仕事終わりで、かなりお腹が空いている私に健太郎が言ってくれたので、ふたりで相談しながら注文した。
特に気になっていたパスタはペロリと完食。
お互いの仕事の話がほとんどで、私ばかり話してしまったのが悔やまれるが、健太郎が聞き上手だったからとても楽しかった。
「あ~美味しかった!」
「あはは。綾子さんは、本当に美味しそうに食べますね」
健太郎が私の長所に気づいてくれ、思わず照れてしまう。
デザートまでしっかり食べたところで、私はパウダールームに行った。
― この後、誘われるかな…。
私はドキドキしながら、メイクポーチからアトマイザーを取り出した。
さりげなく香るように足首にワンプッシュしてから、席に戻る。
すると、健太郎は会計を済ませてくれていた。
― 遅刻しちゃったし、私も払うつもりでいたんだけど…。財布も出せなかったし申し訳ない…。
彼のスマートな振る舞いに私は感激し、心を奪われた。
店を出た後、ふたりで赤坂通りを歩いた。特に会話はしなかったけれど、その沈黙すらドキドキした。
― もう少し一緒にいたいなぁ。
そう思いながら、健太郎の顔をチラチラと見ていたのだが、彼は何も言わない。
きっと緊張しているのだろう。マッチングアプリで会うのは、私が初めてだと言っていたから。
しかし、私たちは赤坂駅に着いてしまった。
ここはとりあえずお礼を言って、誘われ待ちをした方がいいだろう。
「ごちそうになってしまって…すみません。楽しかったです!」
私は、さっき言えなかった言葉と一緒に、健太郎の目を見ながら可愛く微笑んだ。それなのに、彼の回答は予想外のものだった。
「それならよかった。ではここで!」
― あっ…。次の約束、ないんだ。
最初のアポだから遠慮したのだろうか。
千代田線に乗りながら、すぐにお礼のLINEを送ったのだが、既読にもならない。
それは、翌日になっても変わらなかった。
私のことを褒めてくれたし、奢ってもくれた。会う前のLINEも盛り上がっていた。
彼のプロフィールに書いてあった通りグルメ情報も交換できたし、彼の仕事の話にあわせて流行ネタの話もした。
せっかく新規会員とマッチングできたのに、どうして無言でフェードアウトされてしまったのだろうか?
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どこがダメだった…?健太郎が綾子に連絡しなかったワケ
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