「女は所詮、金やステータスでしか男を見ていない」
ハイステータスな独身男で、女性に対する考え方をこじらせる者は多い。
誰も自分の内面は見てくれないと決めつけ、近づいてくる女性を見下しては「俺に釣り合う女はいない」と虚勢を張る。
そんなアラフォーこじらせ男が、ついに婚活を開始。
彼のひねくれた価値観ごと愛してくれる“運命の女性”は現れるのか―?
Vol.1 謎の食い逃げ女
「ええー、社長さんなんて、すごいんですね!」
IT企業の経営者・高見堂明人は、銀座の焼肉店『正泰苑』で、今日も上機嫌だった。
タクシー代3万の約束でやってきた女性たちにおだてられ、得意げに話を続ける。
「いやいや。俺は会社に長くいすぎただけだよ。ちょっと能力があって努力すれば、社長になんて誰でもなれるんだから。ま、その“ちょっと”が難しいんだけどな」
「そうなんですね、知らなかったあー」
女性たちは20代前半だろうか。どの子も似たようなロングの巻き髪と韓国風のメイクだが、華やかな顔立ちは誰も明人の好みのど真ん中だ。
「どんどん食べなよ。女のコはちょっと肉感的なほうが、抱き心地が良くてモテるんだよ」
明人は分厚い塩上カルビを七輪で次々に焼き、各々の皿にふるまう。彼の欲望むき出しの言葉に、彼女たちはキャハハと声を上げて笑う。
「やだぁ~。それセクハラ発言ですよ♡」
「そうやって楽しい場で揚げ足取るのは勘弁してよ。タク代1万追加するからサ」
明人の横にいた女は、嬉しそうな顔で体を寄せてきた。彼女は、聞いたことがない名前の大学でミスキャンパスのファイナリストになったらしい。確かにそこそこの美女だ。
だが、そんな肩書は明人にとってどうでもよかった。
女は、男を楽しませるあたりさわりのない会話ができ、場を彩ることのできる美しさと、その先を期待させるほのかな色気があれば、それで十分なのだ。
明人は結婚しておらず、彼女もいない。この数年で地位と金を手に入れた彼は、その途端に手のひらを返すように寄ってきた女たちに辟易している。
だからこそ、女なんてそんなものだと割り切っており、金を払えば適当に楽しませてくれるような相手が自分にとって都合がいいと思っているのだ。
明人は両脇に美女を従え、鼻の下を伸ばす。
だが、輪の片隅に、呆れ顔で彼を眺めている人物がいた。明人の会社の専務で側近、友人でもある久保康史だ。
この記事へのコメント
マイ次回も出るなら思いっ切り掻き回してよ。