とにかく都会の窮屈な生活から抜け出したい。子どもにとっても、外で伸び伸びと遊べる方が健康的。
そんなことを考えて、地方移住に憧れを抱く人は少なくないだろう。
だが都会生活に染まりきった家族が、いきなり田舎へ引っ越したとして、そんなにうまくいくものだろうか?
子どもの転校に伴う、教育環境や友人関係の変化。習い事はどうするのか…など、家族に降りかかる問題はたくさんあるはずだ。
今回は「伸び伸びと子育てしたいから地方移住」をした稼ぎ人にスポットを当てた。
前回の記事はこちらから【“進学校VS附属校”中学お受験白書!】家族の葛藤と過酷な受験勉強をどう乗り越えたのか?
▽INDEX
1.地方移住希望者は、年々増加している!?
2.都内から引っ越すことを決めた理由
3.地方移住先で起きた、まさかの出来事とは?
4.トラブルに対処しながらも、藤堂さん一家が得たものとは…
休日には子どもと一緒に渓流で魚釣りを楽しみ、晴れ渡る青空を見上げながら野鳥の声に耳を澄まそう。
昼食は自宅の庭で、家族一緒にBBQだ。
手作りのブランコで無邪気に遊ぶ子どもを眺めながら、腰掛けるウッドチェアの傍には自家製の石窯があり、庭で育てた無農薬の野菜をのせたピザが熱を帯びていく。
ゆっくりと、じっくりと。
そんな暮らしに憧れて、地方移住を決めたのは藤堂恵美子さん(仮名、45歳)一家だ。
恵美子さんは、かつてメガバンクに勤めていたが夫との結婚を機に退職し、専業主婦となる。
移住前は神奈川県横浜市の高級低層マンションに住み、夫は企業弁護士として年収2,000万円以上を稼ぐヤリ手だった。
11歳の長男は神奈川県内にある国立小学校に通い、5歳の長女も幼稚園に通わせながら小学校受験に備えていたという。
一見、順風満帆かのように思える生活ぶりだが、何が藤堂さん一家を移住へと駆り立てたのだろうか。
地方移住希望者は、年々増加している!?
地方移住希望者の相談窓口として知られる「ふるさと回帰支援センター」への来訪者・問い合わせ数の推移をみると、2009年時に5,000件に満たなかったものが、2019年時には約5万件にまで増えている。
ここ10年で地方移住への関心は急速に高まっているわけだが、そこに更に拍車をかけたのがコロナ禍だ。
国土交通省の調査によると、2020年4月時点のU・Iターンや地方での転職希望数が同年2月時点と比較して14.3ポイントも増加している。
2020年8月には東京都の人口が減少局面に入ったことでも話題になった。
これまで転入者数が常に転出者数を上回っていた状態が逆転し、転出者数が転入者数を4,514人上回り、同年7月に続き2ヶ月連続で転出超過になったのだ。
その転出先をみると、神奈川県、埼玉県、千葉県といった東京近隣への動きが多く、とくに20代、30代の転出超過が目立った。
こうした移住の流れは東京だけにとどまらない。
移住の動きは全国的に活発になっており、これまで転出先に挙がらなかったような町村にまで、注目が集まっているのだ。
「住民基本台帳人口移動報告」における2020年時の転入超過数が多い町村、上位10位に目を向けると、長野県軽井沢町や茨城県阿見町、熊本県菊陽町といった自治体名が挙がる。
このうち茨城県阿見町、埼玉県滑川町以外は、これまで転入超過数が多い上位10位に名前が挙がっていなかったような町村だった。
こうした地方移住の過渡期に、実際に移住を果たした藤堂さん一家の話を紹介しよう。
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