2022.01.12
現代の“教育・お受験”リアルドキュメント Vol.4我が子の教育をどうすべきか。子どもを持つ親なら誰しもが一度は考えるテーマだろう。
多くが子どもの将来のためにと教育の重要性を認識しながらも、数式のように「これだ」という正解がないだけ、何を優先すべきかは自己判断となる。
そして時間だけが、刻々と過ぎていくーーー。
本連載では、そうした悩める親の一助となるべく、同様の悩みを抱えながらも試行錯誤する稼ぎ人の、リアルな子育ての実情や教育哲学を紹介していく。
前回の記事はこちらから【0歳からの幼児教育・後編】“0歳で習い事は4つ”!稼ぎ人流の幼児教室の「選び方」と「その狙い」
▽INDEX
1.「進学校 or 付属校」子どもに受験させるなら、どちらがいいのか?
2.長男の経験を踏まえ、次男の対策は万全だったのに…
3.入学してみてわかった、進学校と附属の違い
4.過酷な受験勉強を乗り越えるために重要なこととは!?
学歴は必要ない。そうは言っても、我が子のこととなると頭をよぎる受験問題。
なかでも教育熱心な親にとっての“悩みあるある”のひとつに、中学受験がある。
大手塾の推計によると、2021年度の1都3県での私立・国立中学校の受験生総数は約5万人。その数は2016年度から増加傾向にあるという。
そうしたなかで教育熱心な親は、子どもが寝静まった後に考える。
我が子には難関大学の受験を視野に入れた「進学校」がいいのか。
はたまた、大学受験を気にせずに伸び伸びと学校生活を送れる「附属校」がいいのか。
いずれを選ぶにしても親の欲目や思いつきで判断すると、取り返しのつかない事態になりかねないようだ。
今回取材したのは、都内在住の川田弘子さん(仮名、47歳)。
ブランド・コンサルティング会社を経営し、世帯年収は2,500万円ほどだという彼女は、今年16歳になる長男と13歳の次男を育てている。
「頭で考えるほど、生易しいものではありませんでした…」と語る川田さんが経験した、過酷な中学受験の実態とは?
「進学校 or 付属校」子どもに受験させるなら、どちらがいいのか?
「長男は中学受験で早稲田中学に入学し、現在は早稲田高校に通っています」(川田さん)
一貫校である早稲田中学・高等学校は、早稲田大学を経営母体とする「附属」と勘違いされがちだが、実際は系列校であり、その実態は都内有数の「進学校」だ。
同じ系列校に早稲田実業学校(初等部・中等部・高等部)といった、卒業生の9割以上が内部進学という形で大学に進学する学校もあるが、それとは一線を画する。
早稲田中学校・高等学校の近年の進学状況をみると、卒業生の約50%が早稲田大学へ推薦入学する一方、50%は他大学を受験しており、東京大学、京大、一橋大、東京工業大学、筑波大といった大学名が並ぶ。
川田さん夫婦も、いずれは東大といった難関大学への受験を視野に入れていた。そこで長男を有名進学校に入学させるため、小学校3年生の2月から学習塾『SAPIX小学部』へと通わせたそうだ。
「難関中学の受験対策に強い学習塾というと四谷大塚、日能研、早稲田アカデミーなどもありますが、なかでも難関校を狙ってハイレベルな授業内容をしているのがSAPIXでした。
中学受験に特化した学習塾というのは、たいていの場合入塾テストがあります。
とりあえずどこかの塾に入り、途中で志望校を難関校へ切り替える。そこで、よりハイレベルな学習塾に編入しようと思っても、この入塾テストで落ちてしまうことが多いんです。
私たちは当初から難関校を意識していたので、だったらハイレベルな授業をしているSAPIXに最初から入塾させて、もし授業についていけないようなら、他の塾に移れる選択肢を残そうと判断しました」(同)
そうして週2回、夕方5時から夜8時まで、長男の受験勉強の日々が始まる。
「SAPIXの特徴としては“中学受験塾あるある”の、夕飯用の弁当持参というのがないんですね。
親の負担は少なく済みますが、その代わりに子どもたちは休憩時間なしでぶっ通しです」(同)
小学校5年生になると塾の日は週2回から週3回へ、小学校6年生にもなると夕方5時から夜9時までと授業時間も増え、さらに土曜日の昼2時から夜7時までの授業も加わった。
「6年生の2学期ともなると日曜日にも特訓が入ってきて、朝の早いコースだと8時から始まって夜まで、ほぼ丸1日です」(同)
川田さん家族が投じた塾代は月々3万円台に始まり、加えて夏期講習といった講習代が別にかかる。6年生になってからの特別講習も追加で支払ったそうだ。
「6年生のときが一番多く払うことになり、だいたい年間120万円かかりました」(同)
塾にかかる費用はともかく、学習塾のハードなカリキュラムを最後まで終えることができたのは、長男自身のやる気と努力、進学校への熱意があったことは言うまでもない。
しかし、現実は過酷だ。
「本当のことを言うと、長男は進学校のなかでも開成中学、筑波大駒場中学といった学校を目指していました。
ですが受験直前になっても合格ラインには届きそうにないとなり、志望校を変えることになったんです」(同)
川田さん夫婦は想定とは違う現実に困惑したが、進学校を諦めきれない長男の気持ちも無下にできず、中学受験は合格ラインにある早稲田にして、再び大学受験という選択肢を残す。
「難関進学校を目指すには、子どもが塾通いに適応できるのか、そして合格ラインまで行けるのか。
2つのハードルがあり、たとえ思惑通りにいかなくとも、受け止められる余裕と柔軟性が親にとって大事なんだと知りました」(同)
これは決して川田さんだけに限った話ではない。
ドラマの世界のように努力が報われ、すべてがハッピーエンドというわけにはいかないからだ。
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