東京レストラン・ストーリー Vol.1

東京レストラン・ストーリー:港区女子が一晩でハマった男。しかし2人の仲を引き裂こうとする影が…

外食が思うようにできなかった、2021年。

外で自由に食事ができる素晴らしさを、改めてかみ締める機会が多かったのではないだろうか。

レストランを予約してその予定を書き込むとき、私たちの心は一気に華やぐ。

なぜならその瞬間、あなただけの大切なストーリーが始まるから。

これは東京のレストランを舞台にした、大人の男女のストーリー。


Vol.1 碧(29歳)東京は夢を叶えてくれる街?


東京タワーを見ると、5年前に上京してきた日のことを思い出す。

当時碧は24歳で、フリーアナウンサーとして独立したばかり。

― 目の前には無限の可能性が広がっていて、
 東京は、夢を叶えてくれる街。

そう信じて疑わなかったし、30歳までに叶えたい夢が2つあった。

1つはキー局でレギュラー番組を持つこと。そしてもう1つは、幸せな結婚をすること。

あの頃の自分は怖いもの知らずだった。そんなことを考えながら、21時を過ぎた六本木通りで、碧は夜空に浮かんでいる星に手を伸ばしてみた。地元の北海道とは比べものにならないが、東京も冬の空は澄んでいて星がよく見える。

碧は今日、婚約中の雄太郎と大喧嘩した。

怒りに任せて感情を吐き出し、着の身着のまま、彼の南麻布のマンションから飛び出してきたのだ。今度こそもうダメかもしれない。ダウンジャケットのポケットに入れたスマホは、一向に鳴る気配がなかった。

「どこに行こう……」

あてもなく飯倉片町交差点の横断歩道を渡るとすぐ、見覚えのある緑の蔦に囲まれた店が視界に入った。

― …『CHIANTI』か、懐かしい……。


上京したばかりの頃の、ただ楽しくて、華やかに遊んでいたころの思い出が鮮明にフラッシュバックする。

当時夢見ていたアナウンサーとしての夢は叶いそうにもない。でも一方の相応しい男性と結婚する、という夢はつかみかけている。

なのにいま、自分はそれさえも手放そうとしているのだ。

この記事へのコメント

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No Name
東京カレンダーらしい連載が始まりましたね。長年通って思い出のつまって行きつけレストランがあるのもステキですね。
キャンティのメニューなどもしっかり下調べされてるし。
これからも楽しみです。
2022/01/09 05:3099+返信3件
No Name
ステキな連載が始まった♡
一話完結でポジティブな終わり方なのもまたよき。
2022/01/09 05:2691返信2件
No Name
いつもの港区女子の話かと思いきや、なかなかいい話だった。
2022/01/09 05:1058返信2件
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