抱かれた夜、抱かれなかった夜 Vol.9

親友と浮気されて実家に逃げ帰り…。地元で好きでもない男と婚約した、25歳女を襲った悲劇

これは男と女の思惑が交差する、ある夜の物語だ。

デートの後、男の誘いに乗って一夜を共にした日。一方で、あえて抱かれなかった夜。

女たちはなぜ、その決断に至ったのだろうか。

実は男の前で“従順なフリ”をしていても、腹の底では全く別のことを考えているのだ。

彼女たちは今日も「こうやって口説かれ、抱かれたい…」と思いを巡らせていて…?

▶前回:毎週金曜の夜だけ、絶対に会ってくれない彼。怪しんだ女が尾行したところ、見てしまったモノは…


ケース9:婚約後に、人生最愛の男に再会した女・柊真理(25歳)


「地震発生のため、現在運転を見合わせております」

21時の品川駅。首都圏を襲った震度5強の地震の影響で、東京駅へ向かう山手線から押し出された私は、呆然とホームに立ち尽くしていた。

― ダメだ、品川に来ると思い出しちゃう。

過去の記憶がフラッシュバックし、思わずその場にへたりこむ。私はこの街で、恋人と親友を同時に失ったのだから。

1年前。私は当時付き合っていた伸也と、品川のマンションで暮らしていた。

彼は駆け出しのカメラマンで、決して余裕があるとは言えなかった生活。けれど私は伸也を心底愛し、いつか結婚することを夢見ていた。

しかし6年続いた恋は、彼の裏切りで幕を閉じたのだ。「仕事があるから」と言って出かけた伸也は、品川駅の構内で女と肩を寄せて歩いていたのである。

しかも相手は、私の親友・留美子だった。

こうして私は東京での生活を捨てると、伸也に黙って岡山の実家へと戻った。そして半年後。彼とは真逆の、優しくて誠実な男性と婚約したのだ。

― 今日は実家、戻れないかもな。

そう思い、近くの喫茶店を検索しながら高輪口の階段を下りた、そのときだった。

「真理…?」

人ごみの中から、聞き慣れた声がした。心臓がドクドクと早鐘を打つ。

振り返ると、擦り切れたジーンズと編み上げのブーツが目に入った。顔をあげると、切れ長の目の男が微笑んでいる。

「ど、どうして…」

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