2021.11.20
SPECIAL TALK Vol.86「僕は最初のメダリストになれる」小学生時代の妄想を実現させるまで
金丸:お話を伺っていると、お父様にも興味がわきます。太田さんはお父様の学校に通っていたのですか?
太田:いえ。父も母も京都で教員免許を取ったので京都で教えていて、僕は地元の学校に。放課後は友達と遊んで、両親が帰ってくると家族で夕飯を食べ、そのあとリビングで父とフェンシングの練習をするという日々でした。
金丸:お父様としては、フェンシングを通じて、太田さんにどんなふうになってもらいたかったのでしょうか?
太田:「オリンピックに出てほしい」というのが願いでしたね。だから5年生のときには、父が当時のオリンピック代表選手にも会わせてくれて。
金丸:それはいい刺激になったのでは?
太田:相手の剣が見えない、という経験を初めてしました。その方に「オリンピックどうでした?」と聞くと、「1回戦負けした」と。「こんなに強いのに負けるんだ」と衝撃を受けましたね。「この人の実力でも1回戦負けなら、日本はしばらく世界で勝てないな」と思うと同時に、漠然と「じゃあ、僕は最初のメダリストになれるかも」って思ったんです。
金丸:すごいポジティブシンキングですね(笑)。
太田:そうですよね(笑)。オリンピックは4年に一度。2000年だと僕はまだ中学3年生だから厳しい。2004年のアテネ大会のときには大学1年生になっているから、そこに参加できれば、2008年でも勝負できるかなと。
金丸:小学生なのに、そこまで計算したんですか?
太田:なんとなくの妄想でしたが、結果はそのとおりになりました。
金丸:ずっとお父様からフェンシングを教わっていたわけではないですよね?
太田:最初は父に習いましたが、小学校の頃からクラブを2、3個掛け持ちしていました。通うのに1時間から1時間半かけて。
金丸:やはりそうなんですね。ところで、日本のフェンシング人口はどのくらいなんでしょう?
太田:本気でやっている人は、6,500人ぐらいですかね。ハンドボールは6万人くらいだから、10分の1ですよ。まだまだ頑張らないと。
金丸:フェンシングもやはりメインは、学校の部活動ですか?
太田:そうですね。部活動への依存度は高いです。でも最近はいい動きが出てきていて、たとえば渋谷区は、学校をまたいで子どもたちが自分のやりたい部活に参加できるシステムを立ち上げました。そのなかにフェンシングも入っています。学校単位だと部活動として成り立たなくても、学区をまたいで集まれば練習ができるようになるので。
金丸:それはいいですね。マイナー競技というだけで練習できる場所がないのは、フェアじゃないし、子どもたちの可能性を閉ざしてしまいます。それに、私は部活でハンドボールをやっていましたが、やはり野球やサッカーに比べると、肩身が狭いというか、軽く見られていました。
太田:僕もですよ。小学校卒業後、京都市内の龍谷大学付属平安中学校・高等学校に通いましたが、そこは野球が強い学校で。
金丸:甲子園の常連校ですね。
太田:だから、「野球部か、それ以外」という感じで。滋賀でも「フェンシングやってます」と言うと、「ああ、ブラックバスとか釣ってるの?」と。
金丸:それ、フェンシングじゃなくて、フィッシングじゃないですか(笑)。
太田:そうなんですよ。認知されていないし、なんならバカにされている感じがして、多感な時期に何度も悔しい思いをしました。だからこそ、何とかオリンピックでメダルを獲って、「フェンシングは格好いいと認めさせてやる」とずっと思っていました。
オリンピックの舞台で劇的な逆転勝利
金丸:その思いを胸に活躍された太田さんのおかげで、フェンシングのイメージは大きく変わりました。私も2012年のロンドンオリンピック団体戦での逆転劇が、今でも記憶に残っていますよ。
太田:準決勝のドイツ戦ですね。残り9秒の時点で、僕は相手に2点リードされて。
金丸:1点返したけど、残り数秒であと1点取らなきゃ負けてしまうという場面。どれほどのプレッシャーだったか、想像もできません。
太田:フェンシングの団体戦は、チーム4選手のうち、3人を選んでの総当たり戦です。僕以外の2人がすごく調子がよかっただけに、そんな絶体絶命の状況に追い込まれ、正直、僕は負けたときの言い訳を考えていました。「これですっきりフェンシングをやめられる」なんてことも。
金丸:そうだったんですか。でもフェンシングに限らず、スポーツってダメだと思うと負けじゃないですか。よくぞ、ギリギリでさらに1点返せましたね。
太田:後にも先にもダメだと思って勝ったのは、あのときだけです。残り2秒で1点差。「やるしかない」と食らいつきました。
金丸:同点で延長戦にもつれ込み、延長戦も一進一退の攻防。
太田:延長戦は1分間の1本勝負に。
金丸:最後はビデオ判定で、太田さんの勝ちが決まりましたね。
太田:手応えがあったので、勝ったのは自分だと思っていましたが、相手選手は全然納得していませんでしたね。今でも酒が入ったら議論になると思いますよ。
金丸:太田さんとドイツの選手が同時にガッツポーズをして、それからビデオ判定。ああいう場面で、先に「勝った!」と手を挙げるのって、やっぱり大事なんですか?
太田:めちゃめちゃ大事ですよ。ジャッジするのは人間なので、先にアピールしないと。
【SPECIAL TALK】の記事一覧
2024.11.21
Vol.122
~自分の体を認めることが、自分を好きになるための第一歩になる。~
2024.10.21
Vol.121
~スポーツの喜びをより多くの人が体験できるよう、これからも挑戦はやめない。~
2024.09.21
Vol.120
~日本の農業が続くための仕組みを作り、アップデートできるよう挑み続ける~
2024.08.21
Vol.119
~すべてを制覇したい気持ちは変わらない。経営陣になっても燃えたぎる闘志がある~
2024.07.20
Vol.118
~歌舞伎役者を夢見た少女だから、歌舞伎役者の母としてできることがある~
2024.06.21
Vol.117
~1杯で幸せになる利他的なコーヒーを目指して~
2024.05.21
Vol.116
~多くの人の期待と希望を背負う街づくりほど、面白い仕事はない。~
2024.04.19
Vol.115
~この楽器だからこそできる表現を。歴史ある箏を武器に世界を目指す~
2024.03.21
Vol.114
~勝負の気持ちから感謝の気持ちに。青森の伝統を守り、盛り上げたい~
2024.02.21
Vol.113
~学問という知的な武器を子どもたちに。学びの体験をアップデートして日本を変える~
おすすめ記事
2021.10.21
SPECIAL TALK Vol.85
~自分のためではなく、チームそしてリーグのために。経営者としての強みを異分野で生かしたい~
- PR
2024.11.20
銀座で女性と過ごす夜。アイリッシュウイスキーが引き寄せた、2人だけの密やかな高揚とは
2024.05.02
日本酒好きな彼女とのデートにおすすめ!ゆったり落ち着けるカウンター和食3選
2015.11.02
出張のお供に!名古屋の誰もが笑顔になる“お値打ち”な厳選4店
- PR
2024.11.18
総勢100名に当たる!西友&東急ストアで「スプリングバレー」を買って東カレ厳選グルメをもらおう!
- PR
2024.11.21
クリスマスは絶景を望むホテルデートへ!彼女がワッと喜ぶ、とっておきの夜を丸の内で過ごすなら…
2015.01.22
絶対に負けられない接待が、今宵はある
受注後の社長会食。『旬房』の個室で堅い握手
2015.11.06
ガイドブックに頼らない、札幌出張で足を運びたい名店たち
2016.05.19
この手があった!1か月超ステイなら高級サービスアパートメントという選択肢
2015.11.05
博多に出張行ったら、この“うまかもん”たちでお腹いっぱいに!
東京カレンダーショッピング
『佐藤養助商店』:門外不出の技による、喉ごし滑らかな"稲庭干饂飩"
『かに物語』:ふっくらと肉厚な一本爪が2本入ったフレンチカレー
『西岡養鰻』:特製タレ付き!脂の乗った高品質な鰻を土佐備長炭で丁寧に焼き上げた蒲焼
『マルヒラ川村水産』:ご飯に載せて贅沢いくら丼!1粒1粒に旨みが凝縮された、とろける食感の北海道函館産天然いくら
『North Farm Stock』:北海道産ミニトマト使用!糖度が高く、コクとうまみがたっぷり詰まったトマトジュース
『ル・ボヌール 芦屋』:フリーズドライフルーツにホワイトチョコがたっぷりと染み込んだ新感覚スイーツ
『HAL YAMASHITA 東京』:シルクのようななめらかさ!冷え冷えトロリの新食感"ウォーターチョコレート"