推す女 Vol.3

年収600万以上なのに貯金50万以下の28歳女。誰にも言えない“あるモノ”にお金を費やしていて…

私の推し


20時半ごろ。

私は、落合南長崎駅から徒歩5分のところにある、小さなマンションに帰宅した。

作り置きのおかずとご飯で適当に夕食を済ませ、シャワーを浴びてベッドに転がり込む。

スマホでTwitterを開き、トップに出てきた投稿を見て、私は思わず「ひっ」と小さな声を漏らした。

「クリスマスイベントのいずみくん、ビジュ強すぎ……」

それは、私が激ハマりしている女性向けゲームアプリ「スクール・オブ・ヴァンパイア」の公式アカウントによる投稿。

ツイートには、私の最推しキャラクター“城之内いずみ”が、サンタの格好をした美しいイラストが添付されている。

― このカード、絶対にゲットしなきゃ……!

このゲームは、主にストーリーを読み進めていくことが軸となっている。

毎月何かしらの行事に絡めて行われる、ゲーム内の“期間限定イベント”に参加し、“カード”を手に入れることでストーリーが解放される。

しかし、目当てのカードを引き当てるまで“ガチャ”を回さなくてはならない。もちろん1回や2回ガチャを回したくらいでは、当たらない。

さらに、ポイントを消費してカードのレベル上げをしないと、ストーリーの続きが読めない仕様となっているのだ。

私は、スマホをぎゅっと握りしめ、天井を見つめた。

― 今回は……いくら使っちゃうんだろう……。


ガチャを回すにも、カードをレベルアップさせるにも、課金をしなければいけない。

先月なんて、なかなか推しのカードが出てこなかったので、このゲームのために8万円ほどつぎ込んでしまった。

それだけならまだしも、グッズやDVDを買ったり、スクール・オブ・ヴァンパイアの声優たちが出演するライブに行ったり。さらにはいずみくん役の声優“浅田タク”さんの個人イベントや舞台を見に行ったり。

浅田さんに渡すプレゼントの購入や、全国で行われるライブにすべて参加するための遠征費用など、とにかく“推し活”にはお金がかかるのだ。

私の手取りは月35万ほどだが、多い時で月20万以上溶かしてしまったこともある。

そんな生活をしているせいか、貯金は50万もない。

ベッドサイドに置いてある、いずみくんのぬいぐるみを抱きしめてため息をついた。

推しのおかげで毎日が幸せで、充実しているというのに、言語化できないモヤモヤとした不安はぬぐえない。本当に、このままでよいのかと悩んでしまう自分もいるのだ…。

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