推す女 Vol.2

妊活していると言いながら、ピルを飲み続ける33歳女。夫に言えない、驚愕の真相とは

どんなに手を伸ばしても、絶対に届かない相手を想う。

でも、その距離感さえ愛おしく感じる。

彼女たちが抱く想いは、憧れか、依存か、それとも本物の愛か?

結ばれることのない相手に人生を捧げる、女たちの心情を紐解いていく。

これは、「推し」がいる女たちのストーリー。

◆これまでのあらすじ

結婚6年目の夫と、冷めきった夫婦生活を送る、広告代理店勤務の奈津子(33)。ある日、仕事がきっかけで「ライブ配信アプリ」を覗くことになる。そこで見つけた20歳の大学生・流太くんに一目惚れをし、彼にハマっていくが…。

▶前回:世帯年収2,500万・豊洲在住のDINKS妻。ある日、結ばれることのない年下男に恋をして…


『結婚6年目・DINKS妻の恋』奈津子(33)【後編】


私は早々に仕事を終わらせ、夫の分の夕食を作り置き、シャワーを浴びて、あとはもう寝るだけという格好で自室にこもる。

今日は、私がハマりにハマっている配信者の“流太くん”から、何やら重大発表があるらしい。

― きっと、いい報告だよね。楽しみ…!

お気に入りのティファニーのティーカップに白桃紅茶を注ぎ、立てかけたiPadの前で待機する。

そして21時ぴったりに上がった『流太が配信を始めました』という通知を素早くタップし、彼のルームに入室した。

『みんなお疲れさま。今日も来てくれてありがとう。あ、ナツさんは、今日も一番乗りだね』

私はここ最近、どんなに忙しくても彼の配信には一番に入室している。こうして彼に、最初に名前を呼んでほしいから。

『お知らせは……もうちょっと人が集まってからにしようかな。じゃあ、とりあえず1曲目、聴いてください』

流太くんがアコースティックギターを鳴らす。見るからに狭そうな部屋をバックに、切ない歌声を響かせる彼。

男子大学生らしく少し散らかった部屋だが、そこには書きかけの歌詞や、楽譜、好きなバンドのCDなど、たくさんの夢が転がっている。

私が大学の頃に憧れていた、軽音部の先輩も、きっとこんな部屋に住んでいたのだろう。

流太くんは、顔も、話し方も、雰囲気も、本当に先輩によく似ている。だからこそ、こんなにも惹かれてしまうのかもしれない。

― 狭いけど、素敵な部屋。すごく羨ましいな……。

無意識に、今の自分の環境と照らし合わせて、ハッとする。

私は豊洲にある2LDKのタワーマンションに夫と2人暮らし。

ミニマリストな夫に合わせ、部屋にあまり無駄なものを置いていないせいか、だだっ広いだけの、つまらないリビング。

リモートワーク用に最適化された、オフィスのような自室。

ここには、夢も、憧れも、温もりもない。

なんだか虚しい気持ちになり、少し冷めた紅茶を一気に飲み干した。

この記事へのコメント

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バカバカしいと思った。課金し過ぎてしまうのは先週予想した通りだったけど、お金のために子供欲しいしふりをして、ピルを飲みながらエセ妊活とか、何か色々と…
2021/11/16 05:4399+返信9件
No Name
課金に50万…もう凄いねとしか言いようがない(汗)
2021/11/16 05:4072返信2件
No Name
奈津子、先週は当番だったのに夕食作らないし。買い出し担当なのにお醤油切らしたり。今迄分担していた家事すらちゃんとやってなかったよね?それで嘘までついて生活費負担を減らしてもらって家事全部担当するとか、どうなんだろう? 諸々夫がかわいそうだわ。
2021/11/16 05:4742返信2件
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