『嫉妬こそ生きる力だ』
ある作家は、そんな名言を残した。
でも、常に上を目指して戦う東京の女たちに、そんな綺麗事は通用しない。
”嫉妬”。
果てしなくどす黒い感情は、女たちを思いもよらぬところまで突き動かす。
ときに、制御不能な域にまで…。
静かに蠢きはじめる、女の狂気。
覗き見する覚悟は、できましたか?
返り咲きたい女
菜緒の言葉が、耳に焼き付いて離れない。
「彼氏にプロポーズされたの!」
久々に出社したオフィスは閑散としていた。だから、隣の部署で繰り広げられる雑談が耳に入ってきてしまったのだ。
― …菜緒が、結婚?
キーボードを叩く手は、思わず動きを止めた。本当に衝撃を受けると、人は固まるのだと、自分の挙動をもって思い知る。
菜緒はずっとバリバリ働いて、独身のままだと思っていた。どこかで、そうであって欲しいと願っていた。
「あ、梨沙子!今日、出社してたんだ、久々じゃん」
そんな私の願望を知るはずもなく、菜緒はフリーズした私に気づき、一歩ずつ近づいてくる。
…その距離が縮まるごとに、私の中の何かがバランスを崩していく感覚がした。
自分の中に潜んでいたとある感情が、…ずっと前から気づいていたけれど蓋をしていたソレが、じゅわっと身体中に蔓延する。
― …いやだ、菜緒。こっちにこないで…
この記事へのコメント
イラッとする内容だったけど1話完結なのでまぁ来週に期待。