絶食系女子 Vol.1

絶食系女子:恋愛経験ゼロの女を、3回目のデートで家に誘ったら…。男が衝撃を受けたあるコト



結局私は、佐伯さんと付き合ってみることにした。

でも、私たちの関係は付き合う前とあまり変わっていない。きっと、恋愛に臆病な私に彼が気を使ってくれているのだろう。

今日は、付き合ってから4回目のデート。

恵比寿の鮨店で夕食を済ませた後、佐伯さんが「もう少し一緒にいたい」と言ってくれたので、ガーデンプレイス周辺を散歩していた。

「今日の朝倉さんの服、すごく可愛い。髪型も似合ってる。僕と会うために、時間をかけて可愛くしてきてくれたんだって思うと嬉しいよ」

佐伯さんはいつも、私が欲しい言葉をくれる。今日のワンピースは昔MIU MIUで購入したお気に入りだし、ゆるく巻いた編み込みのハーフアップは、それなりに時間をかけてセットした。

夏の生ぬるい風が頬をなでる。それさえくすぐったく感じるくらい、私は彼と過ごす時間に幸せを感じていた。

― なんかうまくいっている気がする。私、きっとこの人となら……。

「朝倉さん」


歩みを止めた佐伯さんに合わせ、私も立ち止まる。名前を呼ばれたので振り向くと、彼はいつになく真剣な表情をしていた。

そのまなざしに、私はドキッとする。良いほうの、ではない。

次に彼が何をしようとしているのか、わかってしまい、身体がこわばるのを感じた。

彼の手が私の腕に触れる……。

私が何も言わないことを同意だと受け取ったのか、彼の顔が徐々に近づいてきた。

― キスされる…。

付き合っていれば、必ずこういうことをするときは来る。いつまでも怯えてはいられない。ここは腹をくくらなくては、と伏せていた顔を上げたそのとき。

彼の大きな顔が目に入ってきた。

― いや……!!

私は思わず佐伯さんの胸を強く押し返した。驚いた表情の佐伯さんを見て、いたたまれなくなる。

「……ごめんなさい!!」

気まずさに耐えられず、私はその場から逃げ出してタクシーに飛び乗った。

心臓がバクバクして収まらない。

― 大学2年のときと何も変わってない。やっぱり私は、恋愛なんてできないんだ……。

21時をまわり、人通りの少ない恵比寿の街を車窓から眺める。カップルや夫婦が、華やかな街並みの中に溶け込んでいく。

自分は、もう一生独りで生きていくしかないのかもしれない。そう思うと、胸が苦しくてはちきれそうだった。


翌日。

リモートワーク開始までの時間、私はコーヒーを飲みながら朝からスマホとにらめっこをしている。

― いつまでも逃げてばかりじゃダメだ。向き合わなきゃ…。

昨晩はベッドに入ってもなかなか寝付けなかったので、自分と同じような悩みをもつ女性の体験談を読みふけっていた。

自分だけではないと知り、少しホッとしたところもあったが…。この状況を打破するためには、相手に自分の思いを伝えていくことが必要なんだとわかった。

だから、私は佐伯さんに伝えたいことを下書きしては修正することをさっきから繰り返している

その時。

突然手元のスマホが鳴り、心臓がはねる。画面に表示された名前を見て、私はさらにぎょっとした。

― 佐伯さん!?

電話がかかってくるなんて…予想外の出来事に戸惑ってしまう。

― 何言われるんだろう。もしかして昨日のこと責められるのかな…。

しかし、ここで電話に出なければ自分は何も変われないと思い、おそるおそる画面をスワイプする。

「……もしもし」

『おはよう。昨日は、ちゃんと家に帰れた?』

開口一番。彼がいつも通りの声色で話してくれたことに、心が救われる。

「う、うん。大丈夫でした。ありがとうございます」

『よかった。昨日はお鮨だったから、今度は肉にしようか。神泉にエイジングビーフの美味しい店があるんだけど、今週の土曜は空いてない?』

私は驚いた。あんなに失礼なことをしてしまったのに、また会ってくれるのか、と。

「空いてます」と答えると、彼はいつもの朗らかな口調で言った。

『よかった。じゃあ18時くらいから予約しておくね』

「あ、あの……!」

私は、佐伯さんの言葉を遮る。

彼にばかり、ずっと気を使わせ続けるわけにはいかない。

自分の気持ちをしっかり伝えなければ、と、スマホをぎゅっと握りしめる。

「昨日はごめんなさい。えっと、なんて言ったらいいか…。私にとっては、その、何もかもが初めての経験で…正直、まだ抵抗感もあったりして、どうしたらいいかわからなくて…。これからも昨日みたいに、また、迷惑かけちゃうかもしれないけど…あの、それでも…」

必死に言葉を並べる私に対し、佐伯さんは電話口で小さく笑った。

『こちらこそ、ごめんね。僕たちまだ付き合ったばかりなんだから、もっとゆっくりお互いのことを知っていこうね』

その優しい言葉に、視界がじわりと滲む。やはり、彼はいつでも私の欲しい言葉をくれる人だ。

― やっぱり、この人となら頑張れるかもしれない。……いや、私は、この人と頑張りたい!

電話を切ったあと、胸を撫で下ろす。ふと時計を見ると、出勤時間が迫っていた。

“土曜のデートを楽しみに、仕事を頑張ろう”

そんな気持ちになり、ハッとした。恋をする喜びとはこういうことなのかもしれないと、感動さえ覚えた。

私はGoogleカレンダーに予定を追加し、明るい気持ちで業務を再開した。さっきまでどんよりしていた空は、いつのまにか雲一つない快晴になっていた。


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