文化・流行の発信基地であり、日々刻々と変化し続ける渋谷。
渋谷系の隆盛から、ITバブル。さらに再開発を経て現在の姿へ…。
「時代を映す鏡」とも呼ばれるスクランブル交差点には、今日も多くの男女が行き交っている。
これは、変貌し続ける街で生きる“変わらない男と女”の物語だ。
「渋谷物語」一挙に全話おさらい!
第1話:突然、うしろから肩を掴まれて…。都会のど真ん中で女が果たした、運命の出会い
「眠い?部屋に行く?」
「大丈夫。もう少しこのままでいさせて」
彼にそうは言いつつも、いつの間にか夢想の中に私はいた。
…これは、いつの渋谷なのか。交差点に大きなビジョンはなく、東急ハンズの看板や赤い銀行があるから、かなり昔だろう。
私が最初にこの街を訪れた24年前、14歳の頃の景色だ。そこにはベレー帽をかぶり、ボーダーシャツを着た少女が立っていた。
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第2話:「気づいたら、彼の唇が…」3年ぶりに再会した男と、急激に距離が縮まった夜の出来事
「大予言が来るから」と自棄になって告白してきたバイト先のシフトリーダーと勢いで交際したり、クリスマス用にサークルの先輩と付き合って、丸の内のミレナリオを見に行ったこともある。
でも、どれも長続きしなかった。ライブに行ったり、ひとりで映画を見たり、買い物する方が楽しかったから。私は、東京を消化するので精一杯だったのだ。
「梨奈ってさ。もしかしてキョウのこと、まだ好きなの?」
「まだ、って…?」
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第3話:「暗がりのダイニングバーで、いきなり…!?」美女が恋人に内緒でハマった、怪しげなパーティとは
今自分が何したいのかって言われれば、特に何もない。
読モも引き続きやっていて、一部ではカリスマ店員と言われたりもする。だけど実は今の店、そこまで好きなブランドじゃない。
こうやって、無気力な毎日を過ごしている。今のところ、生きがいは恭一の存在だけなのだ。
…と、思っていたけれど。
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第4話:彼氏に内緒で、夜な夜な男のもとに通う女。その場で“ある強引な誘い”を受けて…?
…盛者必衰、時代は変わるね。
渋谷だって、パンテオンがあった東急文化会館はとっくになくなって再開発中だし、新しい地下鉄も渋谷に通る予定らしい。
だけど北見社長は、会社も急成長させていて絶好調なのだ。どういうわけか、私が彼の中でいちばんのお気に入りになっている。ちなみにむつみはターゲットを別の経営者に変えたから、友人関係は大丈夫だ。…元々あってないようなもんだけどね。
恭一はというと、勤めていた広告代理店を3年で辞めた。だから私、彼といるのが少々不安なのだ。…いろいろな意味で。
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第5話:誘いを断りきれず、大人の色香漂う街に連れて行かれたけど…。そんな男に、女が心を許したワケ
会社で「iPhoneを買った」と後輩に告げると、Twitterなる不思議なサービスを紹介された。実を言うと未だにmixiで日記を書き続けている私は、短文で投稿するというそのサービスに意味を感じられなかった。でも仕事上、最新情報のアンテナは張っておかないといけない。
すぐ登録し、とりあえず有名人をフォローする。それとともに、社内でアカウントを作っている人を教えてもらい、勝手にフォローした。
「…ん?この人、いいかも」
登録してしばらくはROM専だった。しかし過疎過ぎて惰性で眺めている中、律儀に毎日投稿しているアカウントがふと気になったのだ。
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第6話:渋谷のど真ん中で突然、婚約者が泣き崩れたけど…。女がそれを冷ややかな目でしか見られなかった理由
東日本大震災から、1年が経った。自分の部屋で特別番組を見ながら、この1年を思い返す。
あの日、私は渋谷の会社にいた。猛烈な揺れに死を覚悟したことを覚えている。机の下で、31年の人生が走馬灯のように頭の中をめぐった。
一方で岩手に嫁いだ姉の家は、津波の被害を受けたのだ。親戚全員無事であったが、連絡がとれない間は眠ることさえできなかった。今でも、あのときの不安な気持ちは忘れられない。
だから、その年の8月に控えていた彼との結婚式を延期しようと私が言い出したのは、当然のことだった。
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第7話:「元カレとの煮え切らない関係に、モヤモヤしていたら…」ネットで見つけてしまった、彼の“裏の顔”
「競技場とかエンブレムとか、いろいろ揉めてるよね。まだ遠い未来のようで現実感ないな…」
「あっという間だよ。結局、落ち着くところに落ち着いて、5年後は笑って昔を思い出してるんじゃないの?」
ギアラの脂が網の下に落ちて、一瞬大きな炎を上げる。
― 5年後か。私は、誰とオリンピックを見ているんだろう…?
私はビールを一口飲んで、未来を想像してみる。しかし何も思い浮かばなかった。実はふたり、今こうして焼肉を共に食べている間柄だが、実は結婚どころか恋人同士でもないのだ。
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第8話:「こんな形で終わるなんて…」男が起こした女優とのスキャンダルで、女が驚愕した真相とは
― まさか、こんな形で私たちが“終わる”なんて。
19時。表参道が見渡せるカフェの窓際で、私は道行く人々を見つめていた。呆然としながらも、脳裏にはあのネットニュースがずっと焼き付いている。
『女優・金子あんり、カメラマンと結婚か』
カメラマンとは恭一のこと。“か”という語尾がついているゆえ、本当かどうかは分からない。真相を確かめるために、彼に電話をかけたが繋がらなかった。そして、LINEも既読にならないのはどんな意味があるのだろう。
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第9話:「私って変わってないの?」38歳独身女と子持ちの親友が、同窓会でマウンティング。その結末は…
「梨奈ー!久しぶり」
受付を済ませ所在なく会場に佇んでいると、後ろから懐かしい声が聞こえてきて、すぐに振り向いた。
「佳子!会いたかったー」
実は佳子とは、彼女の出産後に一度ランチして以来会っていない。年賀状のやり取りは数年続けていたが、もうそれもなくなってしまっていた。転校生だったせいで、友達は少なかった高校時代。だけど同窓会に参加しようと思ったのは、彼女が参加すると聞いたからだ。
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第10話:最愛の恋人から交差点で突然のプロポーズ。38歳女がすぐに即決できない理由とは
「…恭一、何かあった?」
スクランブル交差点の信号待ちで、私は思い切って聞いてみる。すると彼は立ち止まり、ハッとした様子で私を見つめてきた。信号は青になり、終電を急ぐ人々が一斉に歩き出している。しかし私たちはその場にとどまった。
「隠せないね、梨奈には」
「そりゃそうよ。長い付き合いだもの」
恭一は微笑む。そして真剣な目で、私だけに聞こえるよう静かに言った。
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第11話:「優しいから、つい…」孤独なアラフォーが受け入れてしまった、敏腕経営者からの甘い誘惑とは
近所の買い物帰りに246沿いを歩きながら、道の終点にある実家の沼津へ帰ることを考える。リモートワークが推進され、拠点を郊外や地方に移す友人や仕事仲間も増えている。
渋谷スクランブルスクエアなど、新しい施設は続々とできているが、それらを思い切り楽しむ機会もない。…刺激を求めて渋谷にいるのに、それを実感できないこの街は、私に必要なのだろうか。
そんなことを考えていたとき、スマホが振動していることに気づいた。表示されていたのは珍しい電話番号だ。仕事だと思い、慌てて電話を取る。
「もしもし?久しぶり」
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