文化・流行の発信基地であり、日々刻々と変化し続ける渋谷。
渋谷系の隆盛から、ITバブル。さらに再開発を経て現在の姿へ…。
「時代を映す鏡」とも呼ばれるスクランブル交差点には、今日も多くの男女が行き交っている。
これは、変貌し続ける街で生きる“変わらない男と女”の物語だ。
2018年10月
地上40階の眼下には、私の街が広がっている。
セルリアンタワーのホテル最上階にある『ベロビスト』。
スペイン語で「美しい眺望」の意味を持つそのバーは、その名の通り自分が東京の天辺にいるかと思えるほど、鮮やかな都会の景色を見渡せる。
そこから見える夜の渋谷には、開発途中の工事現場が広がっていた。その姿に、この街が未だ進化の過程であることを思い知らされる。
ここまで来ても、まだ足りない。渋谷は、私にそう思わせてくれる街。
彼の肩にもたれながら、外国人観光客のざわめきの中に流れるピアノの生演奏を聞く。すると自然と瞼が落ちて、まるで渋谷の夜空に浮かんでいるような感覚におちていく。
「眠い?部屋に行く?」
「大丈夫。もう少しこのままでいさせて」
彼にそうは言いつつも、いつの間にか夢想の中に私はいた。
…これは、いつの渋谷なのか。交差点に大きなビジョンはなく、東急ハンズの看板や赤い銀行があるから、かなり昔だろう。
私が最初にこの街を訪れた24年前、14歳の頃の景色だ。
そこにはベレー帽をかぶり、ボーダーシャツを着た少女が立っていた。
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