リバーシ~光と闇の攻防~ Vol.5

社長から渡された、従業員リスト。秘書を戦慄させた、恐怖の中身とは?

予定調和


結局、“面談”は、秋帆が調整した通り、1週間にわたって行われた。

経営企画の彼の時が一番ひどかったが、その後の面談でも怒号は響いた。オフィスは殺伐とした雰囲気に覆われていて、誰ひとり口を開こうとはしない。

社長室にもっとも席の近い秋帆は、気が滅入って仕方がなかった。

オープンスペースに移動しようと思ったが、黒川から「いつ呼び出しても良いように、自席にいてほしい」と釘を刺されてしまったのだ。

上司の命令だ。まさかNOとは言えないだろう。

面談や黒川について聞きたい気持ちは山々だったが、社員のほとんどが余計なことを聞くなという冷たいオーラを放っていた。

毎日のように出社していたフリーランスのwebデザイナーも、面談が始まるとパタリと来なくなった。

「今は、家で仕事しようと思って」と言っていたが、本当のところはわからない。

面談では怒り狂っていた黒川も、秋帆と話す時は人が変わったように優しく、その豹変ぶりにも戸惑った。



翌週。

「お願いがあるんだけど。こっちに来てもらえる?」

出社した秋帆に、人事部長が声をかけた。

「今行きます」

バッグを置いた秋帆は、すぐに彼の背中を追う。スタスタと歩いていた人事部長は、経営企画の一角で足を止めた。

― あれ…?

何度か通りかかったときに見た風景と、少しだけ違うところがあった。秋帆は違和感を覚える。

ひとつの机に、大量の段ボールが置かれている。そこは、先週黒川が面談して、怒号が轟いた社員の机だった。

「あの、これって」

秋帆は慌てて振り返った。

「彼、昨日退職届を出してきたんだ。だから私物を送り返す手配をして欲しいんだ。

重要な書類は回収したから問題ない。あとは、この段ボールに荷物詰めてもらえる?」

あまりにもあっさりとした人事部長の口調に、秋帆は驚いてしまう。

「えっ…?ご本人が荷物を取りにきたりしないんですか?」

どんな事情か分からないが、退職というと、花束贈呈や寄せ書きなどがあるものだと思っていた。

事実、秋帆も転職するときには、ささやかながらそういったイベントを催してもらったものだ。

だが人事部長は、「辞めた人間に興味なんかないよ」と、切り捨てるように言った。

― そういうものなのかなあ。

もともとドライな人間関係だとは思っていたが、ここまであっさりしているとは、さすがに驚いた。

言われるがまま段ボールに荷物を詰め込んだ秋帆は、最後に小さなメモを入れた。

“おつかれさまでした。新天地でのご活躍を祈念しています”


「今日の面接。どんな感じの人だ?」

段ボールへの詰め込みを終えた秋帆が戻ると、ちょうど黒川が人事部長と話しているところだった。

この面接も、3日前に突然決まったもの。

― スケジュール調整大変だったんだから。

秋帆が心の中で毒づいていると、耳を疑うような言葉が......


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