ヤドカリ女子 Vol.9

「好きでもない男の家に転がり込んでるの」28歳女の告白に、後輩男子の反応は

PR会社で多忙を極める28歳の綿谷あんな。掃除ができず、散らかった部屋に帰りたくないので、求愛してくるいろんな男のもとを毎晩泊まり歩く。

母親の“呪い”に、乱れた生活。そして歪んだ自尊心…。

これは、そんな女が立ち直っていくストーリーだ。

◆これまでのあらすじ

少しずつ惹かれはじめている後輩男子・浅霧祥吾に料理を教えてもらうことになったあんな。「姉に似ているからほっとけないだけ」と宣言されていたのに、突然「可愛い」と言われ…。

▶前回:“野菜の洗い方が分からない”28歳女に、後輩男子がかけた衝撃の言葉とは


…気まずい。

あんなは箸を握ったまま、沈黙のなか身じろいだ。男の家に上がってこんな窮屈な思いをするのは、生まれて初めてだった。

祥吾はあんながこの部屋に来てすぐ「姉と同い年だし似ているから」と、“異性として見ていない宣言”をした。それなのに。

「綿谷さん、可愛いですね」

そんな祥吾の言葉を思い返して、顔が熱くなる。一体どういう意図で言ったのだろう?確認したいが、プライドが邪魔をして聞き返せない。

彼の顔から考えを推測しようにも、分厚い黒縁眼鏡のせいでその表情は読み取りづらい。この私が、こんな垢抜けない後輩男子に心を乱されるなんて。

「そういえばずっと気になってたんですけど」

ひとりぐるぐると思考を巡らせていたとき、祥吾の声が不意に割って入った。

「人生で一度も自炊したことなかった綿谷さんが、急に料理を教えてほしいってどうしたんですか?」
「そ、それは…」
「電話してきたとき、何か落ち込んでる感じだったし」

鋭い。最近気づいたが、彼は人のことをよく見ている。あんなの中で、祥吾の記憶は新入社員研修のときのボーっとしていた姿で止まっていた。

だが、あれから2年。生まれ持った洞察力に加え、人事部で鍛えられて努力してきたのだろう。

そして彼には、悩みを打ち明けたくなる雰囲気があった。

「私、なんていうか…。誰かに認められたい、っていう気持ちになったら、好きでもない男の人のところに行っちゃうんだよね」

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