ヤドカリ女子 Vol.6

意識し始めた後輩男子が、自分にだけ親切にしてくれる…。そのショックな理由とは

PR会社で多忙を極める28歳の綿谷あんな。掃除ができず、散らかった部屋に帰りたくないので、求愛してくるいろんな男のもとを毎晩泊まり歩く。

母親の“呪い”に、乱れた生活。そして歪んだ自尊心…。

これは、そんな女が立ち直っていくストーリーだ。

◆これまでのあらすじ

入社2年目の後輩・祥吾の部屋を訪れたとき「丁寧なくらし」に感銘を受けたあんな。ついに散らかった部屋を「掃除したい」と決意し…。

▶前回:「頑張って片付ければいいのに」後輩男子の正論に、28歳女が返した意外な言葉


あんなは掃除ができない。理由はいくつかある。

そもそも幼少期から、『出したものを元の位置に戻す』ということが大の苦手だった。

大人になったら、そうも言っていられなくなった。職場では物凄い体力と気を遣ってデスク周りを整えている。

しかし自宅は別だ。日々大量の仕事に追われ、真夜中に帰宅すると疲れきっていて、服をハンガーにかける気力もない。そしていざ片付けに臨むと、毎日放置し続けたもので部屋が埋まっている。

そんな中で整理整頓しようとしても、何から手をつけたらいいか分からない。呆然としていると、蘇る母親の声。

―「何であっちゃんはお片付けもできないの?あーこんな子やだ。産まなきゃよかった」

『掃除という行為』が引き金となり、嫌な記憶が再現される。鬱屈として、悲しくなって、落ち込んでしまう。だから掃除がしたくないし、できない。

1K10畳の部屋には、大嫌いな自分が煮詰められている。

今は土曜日の午前11時。いつもなら自宅ではないどこかで、誰かとブランチを堪能している頃だが…。

「…」

あんなは物が散乱するフローリングに座り、握りしめたスマホの画面を睨んでいた。『浅霧祥吾』のトークルームには、お互いを友達登録するために送りあったスタンプしかない。

ふう、と深い息を吐く。男にLINEするのに、こんなに緊張したのは初めてだった。ベージュのネイルに彩られた親指で、ゆっくりと文字を打つ。

『今から電話していいですか?』

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