私たち、出逢わなければよかった Vol.2

婚約者の前なのに…。別の男に心奪われた女がやってしまった、最低な行動

頭の中が、彼で支配されていく…


「ちょっと、聞いてる?」

仕事終わり、信也の自宅でぼんやりしていた菜々子は、彼の声でハッと我に返った。

「あ、三宿の物件だっけ…?」

慌てて、彼の見ているパソコンの画面を覗き込む。

「三宿の話は終わっただろ?さっきからボーッとしてるけど、大丈夫か?」

「ちょっと疲れてるのかな。ごめんね」

怪訝そうな顔をする信也に向かって、ムリヤリ笑顔を作ってみせる。だが実際のところは、麻生との再会の余韻で上の空だったのだ。

エレベーターで二人きりになった瞬間。「菜々子ちゃん」と呼んでクシャッと笑った彼の顔が、脳裏にこびりついて離れない。

―いけない、いけない。

婚約者の前で、他の男のことを考えてぼんやりしているなんて最低だ。菜々子は、物件探しに再び神経を集中させる。

「無理するなよ、もう結婚するんだし。あんまり大変だったら、仕事辞めてもいいんだからな」

「う、うん…」

だがその後も、気づけば麻生のことばかり考えてしまう。

そのたびに信也に声をかけられ、ハッとする。そんなことを繰り返しているものだから、次第に彼もイライラを隠さなくなり、最後は突き放すようにこう言った。

「今日はもういい。タクシーで帰りなよ」

怒りの滲んだ言葉に、ビクッと肩をすくめる。

「ごめんなさい…」

今晩は彼の部屋に泊まるはずだったが、帰れと言われたらそうするほかない。菜々子は、タクシーで帰ることにした。


「あら、今日は信也さんのところじゃなかったの?」

帰宅すると、ソファで寛いでいた母が顔を上げた。

「うん、彼が忙しいみたいで」

目を逸らして、咄嗟に嘘をついてしまう。…過保護な母に、余計な心配をかけたくないからだ。

そして帰宅早々、自室にこもった菜々子はベッド......


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