Re婚活 Vol.1

Re婚活:「それ、聞かないで…」バツイチ女が、初デートで絶対に触れてほしくない話題

社会人になってからひとり暮らしを始めたが、料理だけでなく掃除や洗濯など暮らしを整えることが、亜弥は得意ではない。

食事は、基本外食かテイクアウト。

独身時代に持っていた調理器具は、カップ麺専用の電気ケトルひとつだけ。コンロは使ったことがなかった。

料理と並んで特に嫌いだったのが洗濯。干して畳む工程が面倒で、シーツ類は3ヶ月に一度ニトリで真新しいものに買い替え、古いものは捨てる。

服も、ワンシーズンで使い捨て。ファストファッションでそろえ頻繁に買い替えていた。値段は安くても、新品だとそれなりにきちんと見えるらしく、周りにはいつも小綺麗にしている人だと思われていた。

日常の掃除は、ルンバに任せきり。

そもそも掃除の回数を減らしたいから、家具や物は最低限しか置かない。

こうして独身の頃から、家事が苦手な割には部屋も身なりも綺麗に保たれていた。

だが、この生活を人に知られると結婚できないかもという恐怖があったので、ひた隠しにしていたのだ。

彼と交際中だって、海や山に一緒に出かける時は、前日に買ってきたお惣菜を詰めてお弁当にしたり、ペットボトルのお茶を水筒に詰め替え持参し家庭的な女をアピールしていた。

彼の家に泊まった翌朝は、パンを焼いたりコーヒーを淹れるくらいのことはした。

当時の亜弥は、結婚さえしてしまえば、好きな人のためならやる気になるかもしれないし、二人で分担してやればなんとかなると思っていた。

ところが、当たり前なのだが、一緒に暮らし始めると徐々に亜弥の本性がさらけ出されていったのだ。

最初はなるべく家事をするよう努力はした。

しかし、仕事も忙しい。気づけば、家事全般を夫が担当するようになっていた。それに甘えて、亜弥は次第に何もしなくなった。

亜弥からすれば、独身の時となんら変わらない生活を送っているだけなので、不満はなかった。いや、夫が家事をしてくれる分、むしろ生活は快適になっていた。

元夫は、もともと我慢強い性格なのだと思う。

仕事の愚痴を口にすることもほとんどなかったし、買ってきた惣菜に文句を言うこともなかった。でも顔や言葉に出さなかっただけで、心の中では亜弥に対する不満を蓄積していたのだろう。

結婚して1年ほど経ったとき、沈黙を破り彼がブチ切れたのだ。

「おまえ、はっきり言って結婚詐欺だわ。訴えたい」と家の中のあらゆるところから亜弥の欠点を拾い上げ、罵倒してきた。


「おまえが使う調理器具って電気ケトルだけじゃん。ないわ」

「一日中ルンバが動いててうるせーんだよっ」

「服は基本使い捨てなんてありえない。ものを大切に使う精神とかないの?」

そして、ひとしきり怒鳴り散らした後、彼は言った。

「僕のために何かしたいっていう気持ちはないの?」

それに対して、亜弥は精一杯の反論をしてみた。

「一緒にいて楽しいだけじゃダメなの?好きってだけじゃダメなの?」

元夫からその答えは、得られなかった。その数ヶ月後、彼は離婚届を突きつけ、家から出て行った。

詳細はわからないが、彼にはその頃すでに新しい彼女がいたと思う。

亜弥が離婚届に判を押したのは、それから2年経ってからだった。彼から離婚を求められてもすぐに承諾できなかったのは、自分の非を認めたくなかったからなのかもしれない。

「離婚したくないなら、少しは家事をする努力をしてみたら?」

友人にそう言われ、別居期間中に料理教室に通ったり、週に一度洗濯曜日を設けて家中のものを洗濯してみたり、必死で努力をした。しかし、家事に慣れるどころか、ますます嫌いになってしまったのだ。

その時、ようやく離婚を決断することができた。

離婚が成立した後、しばらくして元夫をSNSで見かけた。

素敵なリビングで、小柄な奥さんらしき人と前菜をつつきながらワインを愉しんでいた。亜弥と暮らしていた頃よりも幸せそうに見えた。自然と亜弥の目に涙が溜まっていた。

悲しいわけでも悔しいわけでもない。ただ気がついたのだ、彼が求めていたことに。

彼は、単に亜弥に家事ができることを求めていたのではない。

きっと、二人でこういう家族団らんの時間を共有したかったのだろう。それに比べて自分は、気持ちはずっと独身のままだったのかもしれない。

― 家族になりきれなかったのかな…。一体どこで、すれ違っちゃったんだろう…。



コロナ渦で出会いが減り、友達と気軽に遊べなくなった近頃。亜弥は、再婚して愛する人と一緒に暮らしたいと強く思うようになった。

前の結婚では、見た目や収入ばかり気にしてたし、今日だって無意識に松下を品定めしてしまったけれど、いざ再婚となったら決め手はそこじゃない。

人並みのお金なら自分で稼げばいい。容姿なんていずれ劣化する。

だから……。

今度は、家事ができない自分を受け入れてくれる人がいい。

欲を言えば、家に帰ってきたときに温かいご飯が出てきたら最高なので、料理が得意な人と結婚できればいいな、と思っている。


亜弥の再婚の条件:料理が得意で、家事能力を自分に求めてこない人



▶他にも:「恥ずかしくて、誰にも言えない…」彼氏にフラれ寂しくて、女がつい手を出してしまったこと

▶NEXT:3月6日 土曜更新予定
どうしても子供が欲しい。再婚相手に求める条件は、「元気な赤ちゃんを授かれそうな人」

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この記事へのコメント

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No Name
男だったら亜弥くらい家事しない夫、料理できない夫いっぱいいるけど、女だと家事できないとだめっていうのはおかしいと思うけど、現実は敬遠されるんだろうな。

得意な方が担当するのも合理的でいいけど、相手がちゃんと感謝できなかったり家事配分に不満があるなら、爆発する前に冷静に家事分担話し合ってもよかったんじゃないかな?共働きなんだし。
分担決めてもやらなかった場合はアウトということで。
2021/02/27 05:2999+返信13件
No Name
服、ワンシーズンで使い捨ての意味が分からなかった。
一度も洗濯やらクリーニングにも出さないで着ているから?
さすがに酷いわ。
2021/02/27 05:2891返信13件
No Name
家事が苦手な人もたくさんいると思うけど、亜弥の場合度がすぎるよね。
私が十分なお金を稼ぐから、家事は全てお願いしますと言えるくらいの仕事を持っているならまだしも。
2021/02/27 05:2680返信5件
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