ヤドカリ女子 Vol.3

「家に帰りたくなくて、男の家を転々と…」真実を打ち明けた女が見た、後輩男子の意外な反応

見た目も仕事も隙がなく、完璧な女。

周囲からは“憧れの的”としてもてはやされるが、そんな人物にこそ、裏の顔がある。…完璧でいるためには、ストレスのはけ口が必要だからだ。

PR会社で多忙を極める28歳の綿谷あんなは、求愛してくるいろんな男のもとを毎晩泊まり歩き、決して自宅に帰らない。

母親の“呪い”に、乱れた生活。そして歪んだ自尊心…。

これは、そんな女が立ち直っていくストーリーだ。

◆これまでのあらすじ

多忙なPR会社で働くあんな。完璧を演じたい性格や毒親との関係でストレスを抱え、鬱憤を晴らすために毎晩男の家やホテルを泊まり歩いていた。

明け方から働いていたある日、先輩が犯した大きなミスを押しつけられる。帰り道に涙が止まらなくなったあんなを助けたのは、入社2年目の後輩・祥吾だった。

▶前回:「こんな姿、見せられない…」男の家を泊まり歩く28歳女が、泣き崩れたワケ


「何でこんなことに…」

部屋の鍵を開ける祥吾の猫背を眺めながら、あんなは思わずつぶやいた。

何かが破裂したように涙腺が決壊し、路上で号泣しているところを彼に助けられたのが40分前。

落ち着きを取り戻した今、タクシー乗り場で泣きながら「あの家に帰りたくない」と駄々をこねる28歳の女の姿を客観的に想像し、思わず身震いする。

男のもとを夜な夜な転々しているとはいえ、あんなにはポリシーがあった。既婚者と仕事の関係者には、絶対に手を出さない。後々面倒だからだ。

浅霧祥吾は後者で、いたいけな入社2年目の男の子。”そういう関係”になるなんて言語道断である。

「あの、私やっぱり」
「狭いですけど、どうぞ」

顔を上げたあんなの声に、ドアを開けて押さえる彼の言葉が重なった。

「洗面台は入ってすぐ右です、ハンドタオル出しますね」

よく言えば物腰柔らか、悪く言えば覇気がない。ふわふわの天然パーマを見ていると、新入社員研修で祥吾を指導したときの印象が、徐々に蘇ってきた。

「…じゃあ、お邪魔します」

まあ、彼は良心から連れてきてくれたんだし、お茶でも一杯飲んで帰ろう。そう覚悟を決め、こぢんまりとした玄関に足を踏み入れる。

そこには出しっぱなしの靴は一足もなく、隅にシューケアセットが入った小さな木箱があるだけだった。

ヒールを揃えて並べ、部屋の奥に進む。一人暮らしによくある1Kだ。「私の家に似ているな」と思っていると、祥吾が電気をつけた。

眩しさに一瞬目を細めてから、あんなは思わず眉を寄せた。

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