2021.02.12
ネイビーな妻たち Vol.12「できれば幼稚舎、ダメなら青山」
夫の一言で始まった息子のお受験。
渋谷区神宮前アドレスを手に入れ、理想の結婚をしたはずの京子だったが、とある幼児教室の門を叩いた日から、思いがけない世界が待っていた。
皆一様にネイビーを基調とした清楚な服装をしているが、そこは高学歴、ハイスペック妻たちの戦場だった。
可愛い我が子のために、全てを犠牲にして挑む、驚愕のお受験物語。
「ネイビーな妻たち」一挙に全話おさらい!
第1話:「幼稚舎か青山!?」神宮前2丁目在住・年収2,000万の夫を持つお受験ママの憂鬱
2019年夏の終わり。間山京子は憂鬱だった。
5歳の息子・隼人の手を引いて歩いているのは、車一台がようやく通ることのできる表参道ヒルズの裏通り。
白いポロシャツに折り目正しい半ズボン、ファミリアで買った木綿のツバ付き帽子の隼人。京子は独身の時プラダで買ったネイビーのワンピースを着ている。当時は背伸びして買ったものだが、34歳になった今、年相応の上品さを演出できるお気に入りだ。
2人の横をベンツがゆっくりと通り過ぎ、少し先で止まった。
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第2話:“名門私立小”への切符を手に入れるために必要なのは、ツテかお金かそれとも…!?
東山先生は、にこやかな笑みを浮かべ、シートの内容を一つ一つ確認していった。
「お二人とも出身大学の系列校ではないようですが、何か理由はありますか?例えば、学校の方針に共感したとか、見学してこういうところが良かった、とか」
東山先生の問いに京子が答える。
「主人の希望なんです」
「ちなみにツテはおありですか?」
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第3話:「妻の待つ家に帰りたくない…」仕事帰りに夫が向かった、西麻布の“ある場所”とは
間山春樹は疲れ切っていた。自分で言い出したこととはいえ、妻・京子のお受験への熱の入れように正直ドン引いている。
家に帰れば、東山先生の話や幼児教室での隼人の様子をたくさん聞かされた挙げ句、父親の課題が言い渡される。お受験がこれほど大変とは…。妻の待つ家に帰ることが春樹は苦痛になっていた。
青山一丁目の職場から自宅のある最寄り駅まではメトロで一駅。が、どうしても家に足が向かない。
タクシーに乗車し、表参道を通り越し西麻布に向かった。11月のひんやりとした空気の中、明るい月を仰ぎながら人通りの少ない西麻布の路地裏を歩き進み、蔦の絡まるビルの前で立ち止まる。手慣れた様子で入り口の暗証番号を押し、ドアを開けた。
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第4話:「お受験のために…」アメリカンクラブでのパーティーに参加した夫婦。そこで見た驚きの光景
「莉子ちゃん、運動もお勉強もなんでもできるのね。二重跳びまでマスターして!」
京子以外の保護者も一様に感心している。莉子はクラスでも一、二を争う優秀な子供だ。
「年少からお教室に通わせているからこのくらいはね。ところで再来週の土曜日、体操の授業後ってお時間ある?」
「あるけど?」
きっとお受験絡みのイベントの誘いだ、と京子は思っていた。だが、リナの話は全く京子の予想に反したものだった。
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第5話:専業主婦にもランク付け!?神宮前界隈に住む女達の、“暗黙の格付けルール”
ママ友が主催しているアメリカンクラブでのガラパーティーが、終わろうとしている。それにしても、随分と華やかな世界だったと京子が余韻に浸っていたその時。
「キッズルームに隼人を迎えに行ってくるよ」
珍しく夫が自ら迎えを買って出た。まるで、その場から離れる口実を探していたかのように。知り合いだと思われる“白いドレスの女”を見てから明らかに様子がおかしい。
あの女が舞台から降りた後、そっと隣を見ると、不自然なほど目線をキョロキョロと動かしながらエスプレッソを口にしている春樹がいた。こんな様子の夫を見たのは初めてで、あの女と何かあると直感した。
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第6話:リモート中の夫の“不自然な外出”に違和感を覚える女。妻が男に突きつけた驚きの要求とは
「出かけるの?」
「あぁ、ちょっと会社に行かないとわからない資料を取りにね。気分転換にオフィスで少し仕事をしてくるよ」
準備の手を止めることなく、背中で返事をする夫。京子はピンときた。
―気分転換ですって?どこでどういう風に気分を転換するんだか…。
そう思った途端、理性の歯止めが利かなくなった。子供の前ではいけない、思い止まるべきだとわかっていたが。
「私、知っているのよ。会社はクローズされていて誰も入れないって。誰とどこに行くのかしら?」
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第7話:「こんな一面もあったとは…」ステイホーム中、夫が気付いてしまった妻の意外な本性
京子が最近思うことだ。春樹に限らず、男は甘えの欲求を少なからず持っているもの。だからマザコンとか、不倫がはびこるのだと。これこそ京子が到達した結論だ。
ー結局男って、弱い生き物ね。
息子のお受験だってミーハーで、流されやすい夫の言いなりでは、振り回されて疲弊するだけだ。
だいたい志望校へのツテを持たないまま、年中の終わりになってお受験に参戦したのだから、子供が生まれた時からお受験対策に奔走している人たちに敵うわけがない。
だから京子自身が、お受験への取り組み方を考え直すことにした。
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第8話:“名門私立小”出身者が抱える闇。小学校受験を巡って繰り広げられる、ママ友同士の攻防戦
「志望校の変更ですって?」
お昼すぎから数時間ほど、縄跳びとボールをたずさえ京子は隼人と代々木公園まで出かけていたが、家に戻るや否や、春樹が言い出したことに呆れていた。
これまで“幼稚舎か青山”のどちらか、とさんざん圧をかけてきたくせに、また気が変わったのか。
「違うんだ。俺の考えじゃなくてさ、東山先生に『一度ご夫婦で考えてみてください』と言われたんだ」
「で?どんな提案なの?」
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第9話:「ひと月100万以上かけて…」お金で解決できるなら、糸目はつけない!驚愕のお受験事情
8月が終わろうとしていた。京子は、相変わらず授業でリナと顔を合わせている。
しかし、リナと志望校のことで言い合いになってから、お教室で会っても挨拶を交わす程度になってしまった。そこから先はまるで結界を張っているかのように、お互いがお互いに寄り付かない状態が続いている。
二人の間に入っている由香里がいなければ、きっとあの時すっぱり絶縁していたはずだ。
だが、お受験の天王山とも言われる年長の夏。ママ友との仲を修復しようなんて気にしていられないほどに、自分のことで手一杯だった。
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第10話:「落ちたら公立」と覚悟していても…。試験当日、お受験ママが顔面蒼白になった非常事態
『受験校は、最終的にどこにFIXしたの?』
由香里からのLINEのメッセージが、ポップアップであがってきた。京子は、それを見て思わず、ダイニングテーブルの上にiPhoneを裏返しにして置いた。
願書の出願も終えた10月半ば。最近、お教室ではお互いにどの学校を受けるかの探り合いばかりだ。
既読をつけようか迷っていると、またLINEの通知音が鳴った。由香里が、立て続けにメッセージを送ってきている。
『天現寺、青山、国分寺あたりは受けるよね?』
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第11話:やっぱり手に入れたい“慶應ブランド”。競争率10倍以上の難関校に挑む、お受験の裏側
「リナさん、大丈夫?」
夕方、お教室前に駐めた車の中で号泣しているとき、夏に仲違いしたはずの京子が声をかけてきたが、返事ができる精神状態ではなく無視をしてしまった。
年長の直前から受験準備を始めたのに特別にお金をかけることもせず、できることを淡々とこなしてきたママ友・京子。
だが、ある意味それは正しい、と今なら言える。いくらお金をかけたところで、本番で子供が力を発揮できなければなんの意味もない。
第11話の続きはこちら
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