今さら聞けないワインの基礎知識 Vol.37

日本ワインを知りたければ、まずは「甲州」さえ押さえておけばいい!

日本の風土に根差した甲州の高いポテンシャル


――では、日本ワイン初心者の私がまず飲むべきは?

柳「それはなんてったって甲州でしょう。」

――ブドウの品種名ですよね?

柳「そのとおり。シルクロードを通って中国に渡り、そこから日本に辿り着いたブドウと考えられているけど、発見には二説ある。

奈良時代の高僧・行基が日川渓谷の岩の上で修行中、手にブドウを提げた如来が夢枕に立った。

それで満願成就の日、行基はそのお姿を木に彫り、大善寺に納め、法薬のブドウをこの地に植えた。それが甲州であるという説。」

――奈良時代だと、千年以上も昔の話ですね?


柳「もうひとつは1186年、上岩崎に住む雨宮勘解由なる人物が、石尊祭に参加するため山道を歩いていたところ、従来の山ブドウと違う珍しい蔓植物を発見。

持ち帰って庭先に植えてみると、数年後に見事な実がなった。これが甲州であるという説だ。どちらが正しいかは脇に置いて、山梨の勝沼に、800年以上前から続くなじみ深い品種だ。」

――でもそんな昔から、日本でワインなんて造ってませんよね。

柳「うん、日本のワイン造りは明治以降なので、甲州はずっと生食用として栽培されてきた。遺伝子的には7割以上、ワイン醸造に向くヴィニフェラ種の血を引いてるんだけどね。

だからこそ、ワイン醸造向きのDNAと、日本の風土に長年適応した性質を鑑みれば、甲州以上にポテンシャルのある品種は、日本にないんじゃないかな。」

――ほう、ほう。

柳「それに最近は醸造方法も様々でバラエティが豊か。オーク樽で発酵させたタイプや流行りのオレンジワインもあるけれど、スタンダードなステンレス発酵の辛口からお試しあれ。

日本ワインの手はじめにはまず、王道といわれる一本を飲んでおくべき。派手さはないけれど品があり、決して飲み疲れない。まさに大和撫子というべきワインをね。」

――つまり、私みたいなワインってことですね?

柳「え……自分で言う?」

たとえば、こんな1本
「グレイスワイン グレイス甲州2018」

女性醸造家として活躍する、グレイスワインの三澤彩奈氏が造るワイン。勝沼の“山路”といわれる、山の斜面で栽培された甲州が使われる。斜面なので日当たり、水捌けに優れ、旨みの凝縮したブドウが収穫できる。清々しさや優しさの中に一本芯の通った味わい。

オープン価格/グレイスワイン TEL:0553-44-1230

教えてくれたのは、柳 忠之さん

■プロフィール
世界中のワイン産地を東奔西走する、フリーのワインジャーナリスト。
迷えるビギナーの質問に、ワインの達人が親身になって答える。

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