必要ですか? Vol.6

「夫の海外赴任中に、寂しすぎて…」豪邸に残された妻が取ってしまった予想外の奇行

“思い出”はときに、“ガラクタ”に変わる。

ガラクタに満ちた部屋で、足を取られ、何度も何度もつまずいて、サヨナラを決意する。

捨てて、捨てて、まだ捨てて、ようやく手に入る幸せがある。


合言葉は、ひとつだけ。

「それ、あなたの明日に必要ですか?」



徳重雅矢は、お片づけのプロ。カリスマ整理収納アドバイザーだ。

“お片づけコンシェルジュ”を名乗る雅矢は、新人アシスタントの樋口美桜とともに、まるで魔法のように依頼人の部屋を片づけ、過去との決別を促し、新たな未来へ導いていく。

今回の依頼人は…綿貫奈美子(38) 綿貫翼(11)

息子依存の母親と、そのせいで苦しめられている息子は、雅矢のアドバイスで問題を解決できるのか。

▶前回:インスタは偽りばかり。家から出られなくなった元エリート証券ウーマンの苦しみとは


依頼人の指定した待ち合わせ場所『タカノフルーツパーラー』で、雅矢と美桜は言葉を交わすことなく、ただ向かい合って座っていた。

昨夜急に呼び出され、打ち明けられた雅矢の過去。

それは、あまりにも壮絶で、美桜の心にも暗い影を落としていた。

―一晩経っても、なんて声をかければ良いのかわからないよ…。

行きつけだというバーで、ぽつりぽつりと生い立ちについて語った昨夜の雅矢の姿を、美桜はありありと思い出す。

父親は会社経営者、母親は専業主婦という裕福な家庭で、一人息子だった雅矢は、何不自由のない生活を送っていけるはずだった。

しかし、仕事人間である一方女遊びも激しかった父親は、雅矢の物心がつくころには、ほとんど家には寄り付かなかったという。そんな中で、母親はノイローゼ状態に陥り、家事がまったくできなくなったのだ。

家はあっという間にゴミ屋敷となり、幼かった雅矢は必死に片付けた。

しかし、ゴミ屋敷が子供の手に負えるはずもない。あまりの状態に堪りかねた父親がハウスキーパーを雇うこととなるが、そのハウスキーパーの女性と、いつしか父が深い仲となり…

雅矢はそこまで話すと、キスチョコと一緒にストレートのウィスキーを一気に煽った。そして、寂しそうに美桜の目をじっと見つめると、小さな声でささやく。

「美桜さん…」

美桜は息を飲み、次の言葉を待った。

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