東京バディ Vol.3

「私が結婚する男って、実は…」美女が明かす婚約者の素性に、男たちが凍りついた理由

夫婦や恋人でもなく、家族のような血のつながりもない。それでも人が生きていく中で求めるもの—。それは「友情」だ。

「たった一人の親友(バディ)がいれば、他には友達なんていらない」。

そう豪語する男がいた。

互いを信じ合い、揺るぐことのない二人の友情。だが、彼らが好きになったのは、同じ女性だった…。

◆これまでのあらすじ

「僕」こと小暮喜八は、就職活動で知り合った親友・片桐とは10年来の親友だ。

二人がひそかに想いを寄せていた女性・舞が結婚すると知り、小暮は「片桐こそ舞とお似合いだ」と一肌脱ぐことを決意する


あれは4年前の夏の夜。

僕は片桐に誘われ、着飾った美しい女性たちが客席に溢れる渋谷の劇場で、とある芝居を観た。

それは、映画やドラマも手掛ける人気劇作家の意欲作で、天才画家・ゴッホと同時代に生きた画家たちの友情と葛藤を描いた物語だ。

女性たちの笑い声やすすり泣く声で、劇場が充満する中、僕だけは愕然として笑うことも泣くこともできなかった。

失礼を承知で無理やりに端的に表現するならば、この物語は「凡人がどれだけ努力しても、絶対に天才には勝てない」というテーマを描いていたからだ。

―これって、まさに僕と片桐の関係じゃないか!

片桐は天才肌だ。

色々と考えすぎる性格の僕と違って、片桐は思い立ったら即行動するような大胆さがある。そして僕はだいたい失敗し、片桐はほとんど成功する。

「そんなことないよ!」

観劇後に向かった松濤のビストロで、そのことを吐露した僕に対し、片桐は大袈裟に言った。

「だって俺たち、ライバルだろ?」

僕と片桐はそれぞれ別の大手商社で働いている。たしかに会社はライバルではあるが…。

「それでも、僕と片桐じゃ能力に差がある。認めたくないけど、認めざるを得ない…」

「いやいやいや…年収だって、ほぼ同じだろ?」

「年収の問題じゃない」

二人の共通の趣味である、映画、演劇、音楽ライブ…そして美味しい店巡り。どれもこれも「片桐が僕を誘ってくれたモノ」ばかりだ。

片桐はいつも、僕の前を走っていて、後ろを走る僕を振り返りながら「小暮!早く、こっち来いよ!」と言ってくれている気がする。

「そんなことないと思うけどなあ…」

僕がどれだけ本音を伝えても、片桐は首をかしげるばかりだった。

―もっとも顕著な例が、舞のことなんだぞ。

本音・オブ・本音が口から出かかったが、そのときの僕はギリギリで押しとどめた。

しかし、あの演劇作品を見て愕然とした、最大の理由がこれだ。

僕はどれだけ努力しても、舞には好かれない凡人だ。対して片桐は、努力をせずとも舞から好かれる天才だ。

これは、否定しようのない真実なのだ。

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