2016.08.25
ラール・エ・ラ・マニエール Vol.1銀座3丁目、とあるビルの地下にそのフレンチレストランはある。
『ラール・エ・ラ・マニエール』は、人生に迷った者が辿り着くという、不思議な、だけど実在するレストラン。”正しい導き方”という意味を持つこのレストランは、東京で生き馬の目を抜くような生活に疲れた時に、その扉が開かれる。
さあ今夜、その扉の前に現れたのは……?
さらにこの物語に出てくる料理は、実際にあなたも味わうことができます。
あなたの物語も綴ってください。
このレストランで、料理とともに……。
一人の女が、銀座3丁目の路地を歩いていた。両手にはいくつもの、ハイブランドの紙袋を提げている。彼女が周辺のショップをぐるりと巡ってきたことは一目瞭然だ。
彼女の名は美香。つい先日まで、大手総合商社で受付をしていた30歳。現在は仕事を辞めて、転職活動中。…というのは表向きの建前で、何もせず、ただ毎日着飾りハイブランドのバッグや洋服を買い漁っている。
時刻は夜の7時をまわった。美香はタクシーを拾える場所まで歩いていると、ふと地下へ続く細い階段が目に入った。階段の上には植物をモチーフにデザインされたようなサインボードが、柔らかな明かりを灯す。そこには装飾的な文字で『lart et la maniere』と書かれている。
飲食店のようだが階段の先にはドアも見えず、地上からは一体何の店かもわからない。いつもであれば何も知らない店に入ろうなんて思わない。ましてやここは銀座だ。扉の先にはとんだ場違いな世界が広がっているかもしれない。だが今日の美香はなぜか、吸い寄せられるように地下への階段を下りて行く。それはまるで、不思議な力で背中を押されているかのようだった
◆
自分の容姿に自信がある美香は、高校生の頃から年上の男性とばかり付き合い、同年代の女友達よりも常に一歩先を行っているという自負があった。
皆が同年代の彼とディズニーランドへ行っている時、美香は表参道のフレンチへ行き、皆が表参道のフレンチへ行く頃には、銀座のグランメゾンへ行く。美香という女は、そうして生きてきた。
商社の前はキー局で受付をしていた。どちらも派遣社員だったが、そんなことは全く気にしていなかった。髪を振り乱して、重いビジネスバッグを持ち、口角が下がった仏頂面で仕事をするなんて、さらさら考えていない。
大きな瞳、ほどよく高い鼻、上品な唇。それらがバランスよく配された美香の顔は、男たちを魅了するのに十分だった。受付に座り、目を合わせてにこりと笑えば、男たちは勝手にポジティブな想像を膨らませる。
食事会の誘いは絶えず、その中からわらしべ長者のように、よりハイクラスな男たちへと渡り歩き、27歳で結婚へとシフトした。手持ちカードの中から最終的に選んだのは、祖父の代に開業し千代田区で総合病院を経営する一族の長男・雅樹だ。彼自身も内科医として勤務しており、将来は院長の座が待っている。
雅樹は恋人にするには物足りないが、結婚相手と考えれば申し分のない男であった。付き合いだして間もなく、ハリーウィンストンの婚約指輪と一緒にプロポーズされた。すべてが美香の理想通り、順調だった。
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