東京バディ Vol.2

「コレってもしかして…」男友達のマンションで発見した1冊の本に、衝撃を受けた理由

夫婦や恋人でもなく、家族のような血のつながりもない。それでも人が生きていく中で求めるもの—。それは「友情」だ。

「たった一人の親友(バディ)がいれば、他には友達なんていらない」。

そう豪語する男がいた。

互いを信じ合い、揺るぐことのない二人の友情。だが、彼らが好きになったのは、同じ女性だった…。

◆これまでのあらすじ

「僕」こと小暮喜八はエリート商社マン。就職活動で知り合った親友・片桐とは、キャラクターが正反対だが、10年来の親友だ。

そんな二人がひそかに恋焦がれていた女性・舞が、結婚するという知らせが届くが…。


「毎日、カレーライス食べてますね」

そう指摘されるまで、僕は気づかなかった。だがたしかに、あれから毎日、昼は社食でカレーライスを食べている。

「喜八さんは食通だと思ってたのに、意外です」

3つ下の後輩・瀬野汐里が、そう言って微笑みかける。

彼女は同じ部署のメンバーだ。少し前までテレワークが続いていたが、一緒に携わっているプロジェクトの関係上、ここ数日は毎日のように出社する必要があり、いつもランチを共にしている。

そして僕は、気づけば毎日カレーライスを食べていた。

グルメを気取っていた去年までが懐かしい。

「…カレーライスは万能食だから」

僕は適当にごまかした。

でも、エブリデイ・カレーの原因は分かってる。舞だ。

実のところ瀬野汐里とは、会社の仲間という関係を越え、何度かデートしたことがあった。その頃は仕事上では「瀬野さん」と呼びながら、プライベートでは「汐里」と呼んでいた。

しかし、いつしか仕事上でもプライベートでも「瀬野さん」と呼ぶようになり、デートすることもなくなった。

その原因も分かっている。舞だ。

瀬野汐里と仲が深まっていけばいくほど「やっぱり舞が好きなんだ」と認識し、ひとときの恋として終わったのだ。この10年の間、付き合った女性も何人かはいたけれど、ずっとそんな感じだった。

誰と恋に落ちても結局、舞が好きなのだと思い出す。

―そんな舞が、結婚してしまう。

ひそかに恋焦がれていた相手が、他の男のモノになる。その衝撃がこれほどまでに心にダメージを与えるとは思いもしなかった。

“他の男のモノ”なんて言い方が前時代的であることは分かっている。だけどそんな常識が簡単に崩壊するほどの喪失感だった。

「舞が結婚するらしいよ」

ステイホーム明けのあの夜、片桐にそう言われたときは驚いたし、悲しかった。

それから日を追うごとに傷が深まっていた。無意識で毎日カレーライスを食べるほどに、思考回路も壊れてしまったらしい。

―僕は、本当に舞のことが好きだったのか。

あらためて、そう認識した。そしてふと考える。

―片桐も、落ち込んでいるのかな?

僕は、幸か不幸か同じ女に恋をした親友を気遣った。だが予想は大きく外れていたのだ。

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