元カレ・コレクション Vol.3

「この男、大丈夫…?」交際1カ月で、男が女に明かした無謀すぎる計画とは

映画を終え、向かった店はグランドハイアットの『チャイナ・ルーム』だ。

本田のイメージにしては気合いの入った店のセレクトに、杏里はこの後の展開を察した。

店を出て、駅まで歩く途中、本田はなにやらモゾモゾしている。

「杏里さん、あの…、僕と付き合ってもらえませんか」

本田を見ると、下を向いたまま目が合わない。杏里は、冷静な頭で考えていた。

ー見るからに誠実で真っ直ぐ。些細な私の希望も尊重してくれる…。

何より、彼は仕事の応援もしてくれるのだ。まさにそれは、杏里が最近自覚した、男性に求める譲れない条件のひとつのはずだ。

ーきっとこういう人が、私を幸せにしてくれるんだよね…?

自分にそう言い聞かせると、杏里はコクリと頷いた。

「うん、ありがとう」

「え、それって、OKってことですか?」

ようやく目があった本田は、いまにも泣き出しそうな顔で笑っている。そして心底ほっとした様子で、「よかったぁ」と呟いた。

「これまでの彼女には付き合って数か月で振られることが多かったんですけど、僕、頑張ります!」

ーん…?

杏里は本田のセリフが少し気になったが、あえて深くは突っ込まなかった。



そこからの交際は、一見順調だった。

杏里が仕事で落ち込んでいると言えば、本田はすぐに電話をかけてくる。平日の夜、ちょっと外食して帰りたい気分になったと言えば、わざわざ会社の近くまで来て、一緒に食事をしてくれる。

杏里のためだったら何でもしてくれる、最高の彼氏なのかもしれない。はじめは確かにそう思っていた。


しかし、違和感を抱いたのは、付き合いが始まり1ヶ月経った頃のことだった。

「杏里さん、今度、ちょっと遠出しません?」

ある土曜日、本田からそんな誘いを受け、日帰りでドライブに出掛けた。

杏里のマンションの下まで車で迎えに来た本田は、嬉しそうにしている。

「最近カーシェアも便利になってさ〜」

上機嫌で運転する本田を横目に、杏里はかつて純とドライブした時のことを思い出していた。

―純は、親から譲ってもらったという愛車を大事にしてたな…。

無意識のうちに、本田と純を比較してしまっている自分に気がついて、杏里は慌てて思考を切り替える。

そのうちに、本田がおすすめだという蕎麦屋に到着した。少し遅いランチをしていると、ふと思い出したように彼がこう言った。

「僕、もうすぐ今のベンチャー企業をやめて、フリーランスになろうかと思ってるんですよね」

突然の宣言に、杏里は思わず蕎麦を食べている手を止める。

―…え?まだ社会人になって数年なのに、独立する…?

「…そうなんだ、意外。何のフリーランスになるつもりなの?」

驚きを隠せなかったが、できるだけ冷静に聞いてみた。すると彼は、こう答えたのだった。

「まだしっかりは決めてないんですけど、ベンチャー投資のコンサルとかプログラミングとかかな」

本田が勤めている会社や本田自身のキャリアを考えても、独立するのが無謀なことは明らかだ。

「なるほどね…」

その後は、微妙な空気の中で食事を終えた。

化粧室へと席を外した杏里は、メイクを直しながらため息をつく。

―本田くんは間違いなくいい人だし、尊重してくれる。だけど一緒にいるといつも、得体の知れない不安がある…。なんでだろう?

どこかすっきりしない気持ちのまま、席に戻ってくると、本田が店員となにやら揉めているようだ。

「あれ、どうしたの?」

杏里の問いには答えず、本田はバツが悪そうな顔をして荷物をまとめ、すぐに店を出ようとする。

「お会計済ませておいたんで、行きましょう」

ーどうしたんだろう?

杏里は急かされるように店を出て、車に乗り込んだ。


▶Next:4月10日 金曜更新予定
優しくて理想的な男のはずなのに。杏里の違和感はどんどん膨らんでいく…。

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