美女の憂鬱 Vol.1

美女の憂鬱:「どうせ、私の顔にしか興味ないんでしょ?」絶世の美女が抱える、ひそかな悩み

―どうして誰も、私の中身を好きになってくれないんだろう…。

夜の青山通りをタクシーの窓からぼんやりと眺めながら、奈津子は思う。

人材派遣会社の営業部に所属する奈津子は、もう数え切れないほど同じシチュエーションを経験していた。

何せ奈津子は、“超”がつくほどの美人。街を歩けば、男女問わず振り返らない人の方が少ない。

透き通るような真っ白な肌に、こぼれ落ちそうなほど大きなアーモンド型の目、まるで人工物かのようにすらりと通った鼻筋、バランスの良い唇。

どのパーツを取っても「美しい」以外の表現が見つからない。

「なつこちゃん、かわいいね」

物心ついた時から幾度となく言われ続けてきた。もはや奈津子にとって「可愛い」や「綺麗」といった形容詞は、褒め言葉でもなんでもなく、ありきたりな言葉に過ぎない。

だからこそ「顔だけ」の女になりたくないと、入社から7年、仕事に精を出してきたのだ。


「奈津子は相変わらずモテるね。羨ましいよ」

早川から告白された翌日の土曜、奈津子は営業部の同僚、美緒(みお)と池尻の『リアン』でランチをしていた。

「モテるって言っても、どうせみんな顔にしか興味がないから意味ないよ」

「まぁ、顔だけでもモテる方がよくない?モテないよりはさ」

出た。美緒は知らないのだ。顔だけで好かれることほど、悲しいことはない。

「気が合うな、友達になりたいな」と思って仲良くしていたはずなのに、気付いたら好意を持たれてしまう。

勝手に好きになられて、勝手に恋をされ、勝手に勘違いをされ、挙句振ると怒るのだ。

…もちろん美人だからこそ、得をしてきたことだって数え切れないほどある。

男性と二人で食事に行けば、財布を出す必要はもちろんないし、タクシー代を払うことだってない。男性の車で送り届けてもらったことだって、何度も。

だけど、そんなちょっとした「ラッキー」は、奈津子にとって当たり前のことだ。

奈津子は「美女扱い」されることが当然で、いつからか「ちょっと多めに払うよ」なんてことを言われれば、「しょぼい男だな」と思ってしまうようになっていた。

この「矛盾」が、自分自身を苦しめていることを、奈津子は知っている。

この記事へのコメント

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No Name
出た!東カレの三点セットw
透き通るような白い肌
アーモンド型の目
通った鼻筋
鈴木その子か?
2020/03/16 05:1999+返信10件
No Name
美人でもその性格はね…安心してください!30すぎると性格が顔に出ますから!「容姿で!」と言われなくなるのもあと少し!
2020/03/16 05:1499+返信9件
No Name
職場の超美人さんな女性と飲んだ時に酔った勢いで「生まれた時から美人てどんな気持ち?」なんて不躾な質問をしてしまった事があるんだけど
「嬉しいけど、人に見られず静かに生きていきたい」と。羨ましいけど美人は美人で大変なんだよね。
2020/03/16 06:3499+返信6件
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