―人生は選択の連続であるー
人は何を基準に「選択」するのだろうか。
安定・お金・愛?
29歳の岐路で、自分の選択基準を“安定”から“好き”に変えた女がいた。
何かを掴むために自ら動きだしたものは、運命すら変える力を持つ。
インフルエンサーのマネージャーという未経験・異業種の世界へ飛び込んだことにより、
平凡だった彼女の運命は、周囲を巻き込みながら大きく動き始める…。
「いまさら画像を加工しちゃいけないだなんて。私のテイスト知ってるよね?こんな画像を投稿したら、フォロワーだって離れちゃうよ!」
真っ赤なリップが塗られた厚ぼったい唇を大きく動かし、春名カナが興奮気味で訴えている。
彼女は、今10代~20代の女性から圧倒的人気とフォロワー数を誇るインフルエンサーだ。
「写真を加工することは事前に説明してあったので、私もどうしてこんな修正依頼が来たのか分からなくて…」
カナのマネージャー・広瀬梓が肩をすくめて、早口で説明をする。
「カナさんの個性でもあるエフェクトやトリミングが施された画像は、どれもカナさんの世界観が表現されていて私も自信を持ってクライアントチェックへと回したんですけど…、すみません。こんなことになるなんて…」
今回揉めているのは、オーガニックコスメで高い評価を誇る企業「コスメ・チッタ」の新作「Berry love」の広告案件についてだった。
事前の打ち合わせで合意できていたはずなのに、実際にカナが撮影した画像をみて、クライアント側が画像の加工に難色を示してきたのだ。
「前のマネージャーの時は、こんなこと起きなかったよ!ねえ、梓さん、ちゃんとこの仕事してる?」
会議室で足を組みながら、カナが梓に詰めよる。
カナが梓を頼りなく思っているのには、理由があった。
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