ランチを終えて、悠人とLINEをしながらオフィスに戻り、エレベーターを待っていると、翔太が心配そうに智絵美を見てきた。
半分無意識で、智絵美がニコッと翔太に笑いかけ前を向くと、向かいのエレベーターから悠人が現れた。
翔太と智絵美の姿を見て足早に歩き去ろうとする悠人を止めようと、智絵美は思わずその腕を掴んだ。
「日曜、一瞬でもいいから会わない?ちゃんと話したい」
何も言わずに智絵美をしばらく見つめると、悠人はコクリと頷いた。
◆
外苑前の並木道。心なしかいつもより裸の木々が寂しく見える。
横を歩く悠人は無言のままだ。くるくるとパーマのかかった髪に可愛らしい顔立ち。その見た目に反して、悠人の目は鋭く遠くを見つめている。
おもむろに、悠人がキュッと結んでいた口を開いた。
「あのさ、俺、誰かと付き合ったり、結婚とかして縛られるんじゃなくて、自由に生きる方が向いてると思う」
智絵美は一瞬、目の前が真っ暗になったような気がした。
「それって、別れたいってこと?」
考え込むようにうーんと唸ると、悠人は淡々と答えた。
「そうだね。智絵美のこと好きだけど、俺には恋愛とか、向いてない。わざわざ努力して辛い思いをするくらいなら、一人でいたほうが楽」
「一人でいたほうが楽って...」
智絵美は苛立つ気持ちを抑えきれず、思わず足を止め悠人の方を振り向く。
「悠人って、仕事で自分が周りの人になんて言われてるか知ってる?都合良いとか責任感がないとか。仕事もプライベートも、どんなに辛いことから逃げても無駄だよ」
「それでいいんじゃない」
職場での不評を聞きショックだったのか、表情を歪めながら悠人はボソッと答えた。
ーそれでいい…?
この言葉で、智絵美の中の何かがプツリと切れてしまった。
深夜0時の分岐点
深夜0時。
シンデレラの魔法が解け、現実に戻るように…
27歳。
学歴良し、勤め先良しの男女が送る夢のような日々は、27歳で現実を迎える。
若さと勢いで乗り越えられてきたものが、なんだか小難しくなってくる。
キャリアアップはどこまで目指すのか。結婚はするのか。子供は持つのか。
様々な選択肢が押し寄せてくる頃。
魔法が解けた時、彼・彼女は一体どんな選択をするのだろうか。
この記事へのコメント
悠人はただのお子ちゃま。
その予定が忘年会だし。