2019.12.29
深夜0時の分岐点 Vol.1「で、自己中坊ちゃん悠人くんと、最近どうなの?」
待ってましたと言わんばかりに、前のめりになる翔太。数少ない転職同期で、本音を語れる翔太とのランチは、智絵美にとって貴重な息抜きだ。
「昨日も疲れて連絡したのに心配とかされないし、変わらずよ」
「成長しないねぇ」
サラダをつつきながらため息交じりに答える智絵美に、翔太は呆れた表情を見せる。
「そういえばこの間、悠人と一緒の案件入ったけど、またミスを後輩のせいにしてたよ...いい奴だけど責任感がないのだけが玉にキズだよなぁ」
悠人と同じチームの翔太から、仕事での悠人の「逃げ癖」を聞くたびに、智絵美はいたたまれない気持ちになった。
「なんかごめん」
「いいよ、智絵美が謝ることじゃないし!でも、あいつは付き合うにはいいけど、結婚向きではないね」
翔太は気に食わなさそうに顔をしかめながら、水をごくりと飲み干した。
翔太の言うことも理解できるが、どうしても腑に落ちなかった。責任感が薄く、逃げがち。けれど、繊細で臆病な悠人の心優しいところが智絵美は好きだった。
付き合う前のデートで、寒いはずなのに上着を貸してくれたことも、指輪をなくして2人で探した後にこっそり一人で探してくれていたことも、強がりだけど実は涙もろいところも、全てが智絵美には愛おしかった。
「もういい歳だし、自分のためになる人と付き合わないといけないのはわかる。それに悠人と一緒にいるとイライラすることも多い、でも...」
「俺だったらそんな思いさせないんだけどな」
食い気味に被せてきた翔太を、困ったようにちらっとみると智絵美はすぐに視線を手元の時計に向けた。
「そろそろ戻らないと」
翔太とデスクに戻りながら、智絵美は悠人とのLINEを開いた。
-智絵美:昨日はごめんね。次いつ会えそう?-
智絵美の連絡に、すぐに既読の文字がつく。
-悠人:毎日忘年会。年末は友達と海外で年越し-
-智絵美:どっかで時間作れない?-
-悠人:予定断ってまで智絵美を優先するなんて、無理。それに智絵美がもっと早く予定教えてくれないのが悪いでしょ-
反論を続ける悠人にムッとし、携帯を強めにタップしながら智絵美は返事をした。
-智絵美:お互いに会うための努力しようよ-
―悠人:努力ねぇ…―
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